■メタバースライフをどう楽しんでいる?

このセッションでは、まず、各登壇者が普段どのようなメタバースの楽しみ方をしているかを紹介しました。

東峰 裕之 氏:クラスター株式会社 プロダクトマネージャー(左)
田名部 康介 氏:株式会社タナベ 代表取締役(中央左)
さわえ みか 氏:株式会社HIKKY COO/CQO(中央右)
國武 悠人 氏:NPO法人バーチャルライツ 理事長(右)

さまざまなメタバースのコミュニティに参加しているというさわえ氏は、次のように話します。

「一言でメタバースといっても、いろいろなカルチャーがあります。たとえば、VRChatやclusterのようなVRSNSのコミュニティは、“アバターで好きな姿になった自分”にアイデンティティを見出しています。一方で、Web3メタバースのコミュニティは、自分の持っているNFTをユーザー同士で見せ合う文化です。デジタルの空間で何をしたいかによって、どこで楽しむかが変わると思います」

東峰氏は、アバターを着飾って自由にファッションを楽しめることの魅力を強調します。

「リアルではなかなか挑戦できないような服もアバターなら気軽に着られるんですよね。VRSNSのコミュニティには、自分の理想的な姿になったり自分が本当に好きな格好をしたりして、それをコミュニティの中でほかの人に見てもらって楽しむことができるカルチャーがあります」

東峰 裕之 氏

そして田名部氏は、メタバースの魅力を「いろいろな人たちに会えること」だと話します。

「私は45歳なのですが、この歳になるとリアルな世界で新しい友達と出会う機会は少なくなります。メタバース内では10代の若者から自分より年上の人までいろいろな人に出会うことができて、しかも、社長とか学生とかそういったことは関係なく同じステータスで交流して仲良くなれます」

■メタバース内のQOLをどう向上させる?

続いてのテーマは、「メタバース内のクオリティ・オブ・ライフを向上させていくには何が必要なのか?」です。東峰氏は、メタバース空間に入るハードルとQOLの関係について言及します。

「メタバースが、テキストや動画を使った従来のインターネットと違うと感じているのは、空間丸ごとの体験を作れる点です。その中にいろいろな人が入ってきて、そこで自分という存在を表現できる、いるだけでコンテンツになるという楽しさがあります。そこの楽しさに出会うまでのハードルがもっと下がっていくことが、QOLの高さにもつながるのではないかと思っています」

さわえ氏は、ユーザーのQOLを向上させるために、企業がメタバース空間を作るときに意識すべきことをこう指摘しました。

「メタバースは、どこか特定のプラットフォームに縛られるものではないので、どの層に向けて何のコンテンツを出していくかをしっかり設計したうえで作ることが大切です。たとえば、没入感や映像のクオリティを重視するのか、スマホなどからもアクセスできる手軽さを大切にするのかで、使うプラットフォームは異なってくると思います。そこがあいまいになってしまうとユーザーが求めるものと実際の空間に矛盾が生じてしまう可能性があります」

さわえ みか 氏

田名部氏も、複数のプラットフォームを使い分けることの必要性に同意します。

「プラットフォームがひとつに統一されるよりも、いろいろな場所があるほうがよいと思っています。先ほどいろいろな年齢の人と友達になれるのが魅力と言いましたが、そうは言っても同じ年齢層の人と交流できる場もあると嬉しいなと思ったりします」

さらに、メタバースで知り合った人とリアルで会うことのよさや、リアルだけで交流する場合との違いについても語り合われました。

日本蕎麦店を経営する田名部氏は、メタバース内で知り合った人たちが実際の店舗に足を運んでくれることも多いと話します。

「メタバースとリアルの世界を分けるというよりは、レイヤーがひとつ増えたような感覚です。どちらの世界も楽しめて、相互作用で幸せになっていく展開を作っていけたらいいなと思っています」

田名部 康介 氏(中央モニター)

さわえ氏は、初対面がアバターなのかリアルなのかで受ける印象が違うと言います。

「自分のリアルな姿が好きではなくてアバターで活動している人もいると思いますが、リアルで会う前にメタバースで会っている相手の場合、その人の基本的なイメージはアバターの方で、その上でリアルな姿があるという感じになるんです。そこの違いはすごく大きいと思います」

■プラットフォームは今後増える?

さらに、メタバースのプラットフォームの今後についても意見交換がなされました。東峰氏は、「さまざまなプラットフォームが登場していく」としたうえで、そのときに重要となることを次のように指摘します。

「ユーザー体験の向上の鍵となるのは、所有しているアバターやアイテムがどう扱われるかだと考えています。アバターについては標準化団体も設立され、規格の整備が進みつつありますが、メタバース内のアイテムを別のプラットフォームに持って行くことは、難しいケースも多いかもしれません。これは業界全体で考えていく必要のある重要なテーマだと思っています」

田名部氏も、ワールド制作者として共通規格の必要性を感じていると言いつつ、「メタバース空間を作るという文化自体がまだ草創期だと思うので、今後に期待したい」と話します。

最後に、これからメタバースライフを始めたい人へのアドバイスを聞かれたさわえ氏は、次のように話しました。

「大切なのはコミュニティだと思います。どこのプラットフォームにも、初心者に優しいコミュニティがあるので、まずはTwitterなどで『プラットフォーム名+初心者案内』などで検索して、そこを訪れてみるはどうでしょうか」

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