■NFT、メタバース、DAOがひとつの生態系として完成されつつある
自民党デジタル社会推進本部のNFT政策検討プロジェクトチーム座長として、3月に公開された「NFTホワイトペーパー」のプロジェクトを牽引した平氏は、このプロジェクトに携わる以前からNFTには注目していたと話します。
「クールジャパン戦略や地方創生に携わってきたなかで、日本のコンテンツやサービスの価値がグローバルな価格から見て低すぎるという問題意識を持っていたのですが、NFTはこの問題を解決するテクノロジーだと感じました」(平氏)
2022年に入ってプロジェクトチームを立ち上げ、Web3関連の有識者とも意見交換しながら課題と論点を整理していったとのこと。
「NFTが登場し、メタバースの可能性が語られ、さらにDefiやDAOが出てくるなど、ひとつの生態系として完成されつつあることを実感しました。日本は何をするにも時間のかかる国なので、早くキャッチアップして進めていく必要があります」(平氏)
■なぜ、日本は何をするのも遅いのか?
日本の法改正やルール整備が欧米に比べて時間がかかる背景について、平氏は「構造的な問題が大きい」といいます。
「新しいものをどんどん取り入れて先端を走るイギリスやアメリカ、シンガポールなどは、“英米法”が採用されている国です。これは判例法ともいわれ、新しい技術やサービスがあったらどんどん始めてしまい、もし何かトラブルが起きたら、判例を積み重ねて新たにルールを作っていくという形をとるものです。
一方で日本やドイツはルールをまずしっかり固め、グレーゾーンの解消にもルールの変更が必要になる“大陸法”が採用されている国です。そのため、2、3年の遅れはどうしても起きてしまうのです。だからこそ、どんどん前倒しでスピードを上げてかないと追いついていけないと考えています」(平氏)
さらに、国として新しいことを進めるときのスピード感は、「総理のフルコミットがあるかどうかで変わる」と明かします。
「デジタル庁は1年でできましたが、通常なら3年から5年はかかったはずです。これだけの短期間で実現できたのは、菅 義偉前総理がフルコミットしたからなんです。国家戦略特区も短期間で実現しましたが、これも当時の安倍 晋三総理のフルコミットがあったからです。私の感覚では3倍くらいスピードが違いますね」(平氏)
■DAOは特区を活用できる可能性がある
スピード感をもって新しい取り組みをするための手段として、特区を活用することはできるのかという質問に対しては「種類による」と答える平氏。
「税金に関しては厳しいかもしれませんが、DAOについてはかなり可能性があると思っています。“DAO特区”のような感じで、自治体と協力しながら国家戦略特区を指定して試験的な取り組みを進めていくようなことは可能だと考えています」
また、新しい資本主義の成長戦略の目玉のひとつでもあるスタートアップ支援にも力をいれていきたいと話します。
「資金面でスタートアップを支援するファンドを設立したり、スタートアップキャンパスのようなエコシステムを作ったりする構想も挙がっています。私のなかでは、Web3の政策とスタートアップの政策を車の両輪にして動かしていくイメージですね」(平氏)
さらに今後は、ベンチャーキャピタルや有限責任投資組合がスタートアップに投資する際に、トークンに直入投資ができる環境を整えていくことも今後は重要になっていくといいます。
■提言をまとめてローメーカーに届けてほしい
では、企業や自治体などが、これまでの法制度などにはまらないことにチャレンジしたいときは、どこにアプローチすればよいのでしょうか?
「普通はまず役所に行くと思いますが、役所は今まで受けたことがない相談に対しては“やめておいたほうがいい”と答えると思います。それは仕方ないことなんです。では、どこに行けばいいかというと、やはりローメーカーに直接アプローチするのが一番だと思います。つまり、自分で政策を作っている国会議員ですね」(平氏)
政策づくりに関わる人は国会議員のなかでも少数で、たとえば自民党の場合、デジタルやイノベーションの分野の政策に関わる議員は20人程度とのこと。とはいえ、一般の人がいきなり国会議員にアポイントを取るのはハードルの高いことです。
「だからこそ、Metaverse Japanのような団体に、みなさんの提言をまとめてローメーカーのところまで持ってきていただく役割を担っていただきたいと思っています。ともかくスピードが速い世界なので、お互い情報交換しながら進めていきましょう」(平氏)