スマホのようにXRデバイスを利用する未来

このセッションでは、XRコンテンツを街や商業施設で展開することで期待できる未来についての議論が行われました。

林 直孝 氏:J.フロント リテイリング株式会社 執行役常務 グループデジタル統括部長(左)
山口 征浩 氏:株式会社Psychic VR Lab 代表取締役 CEO(右)

リアルメタバースプラットフォーム「STYLY」を提供し、都市に対してコンテンツを配信することで街や地域を活性化する事業にも力を入れている山口氏。昨今のXRデバイスの進化によって、都市や商業施設の未来が広がってきていると期待を寄せます。

林氏が「デバイスの進化という観点でいうと、都市よりも前に我々の生活が変化することが考えられる。例えば2008年にAppleのiPhoneが日本に入ってきて、そこから大きく生活が変わった。XRデバイスの進化によって我々の日常はどう変わるか」と尋ねると、XRが日常的に使われる未来が訪れるまでに、大きく2つのフェーズがあると山口氏は予想します。
「最終的には今のスマホのように、パーソナルで非常に軽いXRデバイスを身につけて、街を歩いていても利用できる未来は必ずやってくると思います。ただし、2023年6月にAppleが発表したVision Proもそうですが、デバイス自体が高価だったり、日常が便利になるようなアプリケーションがなかったりする段階においては、強度の高い体験は提供できても、日常的に持ち歩くようになるまでには超えるべきステップが1つあると言えそうです」(山口氏)

山口 征浩 氏

そのためにはまず、強度の高いMRコンテンツを、商業施設や都市などの日常に紐づいた場所で体験できる環境を整えることだと山口氏は話します。

XRの活用で商業施設の体験が変わる

次に山口氏は「STYLY」の提供価値である「空間を身にまとう世界を作る」ことについて、「XRで作った空間を体の一部として、自分たちの生活の中で使っていく世界を実現したい」と話しました。
「そういう世界を実現する人を増やすためのサービスを実現するために、現実空間に対してXRコンテンツを配信するインフラや教育プログラムを作っていきたいと思います」(山口氏)

この「空間を身にまとう世界」について、林氏は次のように返しました。
「SONYのWALKMANが登場したときに、みんなが音楽を身にまとって街に出るようになったと山口さんが話していました。これからスマートグラスがWALKMANのように普及して、みんなが空間を身にまとって街に出るようになったときに商業施設はどうあるべきかを考えています」

商業施設での事例として林氏は「ゲームとショッピングセンターの融合」を挙げました。これは2023年4月にGINZA SIXで行ったイベントで、リアルな商業施設の中でビデオシースルー型のゴーグルを使い、スマホゲームの中に没入するという体験をするというものです。
「今までは基本的に一人で部屋の中や移動中に楽しんでいたゲームを、あえて街中のショッピングセンターのような人が集まりやすい場所で楽しむ。そういうことが商業施設の楽しみ方に変わっていくと予感しています。それにはスマートグラスのようなデバイスがあって初めて実現されると思うので、今はSTYLYのプラットフォームを使いながら一つひとつ実装準備をしている段階です」(林氏)

林 直孝 氏

これに対して山口氏も「商業施設に関して言うと、エレベータホールや天井、壁といった今まで付加価値を付けられなかった場所にミックスリアリティを使って、新しい商業的価値を生み出せるような場所に変えることに意味を感じる」と話しました。

XRを使って民主化された街作りを実現

最後に林氏が街の一要素である商業施設が変わることで、街はこれからどう変わるかを山口氏に尋ねました。

「我々はSTYLYというプラットフォームを通して、作り手の敷居を下げ、多くの人が参入しやすくなることを実現したいという思いを創業当時から持っています。現実世界ではビルを建てる場合には構造設計や安全性を理解しなければならないし、街の中で飛行機を飛ばすこともできません。しかしXRを使えば街づくりが民主化され、新しい価値を生むことに多くの人が関わりやすくなると思います。そこから都市だけでなく地域の活性化にも貢献できたら良いと思います」(山口氏)

「それぞれの街、それぞれのエリアでリアルメタバース、現実のものとバーチャルのものを組み合わせることで、さまざまな可能性の広がりを予感しています」(林氏)

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