ブリティッシュコロンビア州はビジネスをしやすい都市

「ブリティッシュコロンビア州は豊富な専門人材が揃っており、競争力のある経済を実現しています。特にAR/VR分野で台頭する企業がビジネスをしやすい環境を作り出すために真剣に取り組んできました」

シンポジウム最後のセッションとなる特別講演では、ブリティッシュコロンビア州におけるイマーシブテクノロジー(AR/VR/MR)ビジネスの優位性や40年間にわたる実績、具体的な支援策について、カナダ ブリティッシュコロンビア州政府のブレンダ・ベイリー氏に語っていただきました。

ブレンダ・ベイリー氏:カナダブリティッシュコロンビア州政府 雇用経済開発イノベーション省大臣

「ブリティッシュコロンビア州は2019年に260社もの没入型テクノロジー企業が事業を展開し、ベイエリアやシリコンバレーに次ぐ存在となっています。AR/VR産業が発展している主な理由は、ルーツにデジタルエンターテイメントがあるからです。映画やテレビ、アニメーション、ビデオゲームなどのインタラクティブ産業が重要な役割を果たしており、40年間の歴史がAR/VRが台頭する基盤を築きあげてくれています」
ブレンダ氏自身もテクノロジーが大好きで、ビデオゲームを長くプレイしてきたゲーマーだといいます。その後はソフトウェア会社やテクノロジーセクターで経験を積んだ上で大臣となっており、州独自の施策が今の都市を創り上げているといいます。
「ブリティッシュコロンビア州の首相は私が所属していたビデオゲーム会社のCEOであり、その彼が私を雇用経済開発イノベーション担当大臣に任命しました。このような登用からわかる通り、ブリティッシュコロンビア州はテクノロジーに優しい都市として世界でトップクラスの評価を得ているのです。2019年にはスタートアップエコシステムで世界の上位25都市に選ばれ、ハイテク職種の雇用増加率では世界15位となっています」
またブレンダ氏はテクノロジーに優しい都市を実現できている要因として、税率の低さや助成対象となる研究機関の充実を挙げ、ブリティッシュコロンビア州の魅力について説明してくれました。
「ブリティッシュコロンビア州は海や山に恵まれ、世界的に優れた多文化共生社会である点も魅力の一つです。活気に満ちた都市や世界有数の大学、だれでも利用できる無料のヘルスケアサービスなど、高い生活水準を実現できます。そして、新しいテクノロジーであるクラウドやエッジコンピューティング、AI、AR/VR、 NFT、ブロックチェーンといった技術が台頭したことにより、ブリティッシュコロンビア州がメタバース領域における大きなハブへと育ってきています」

ゲーム・エンタメ分野で40年以上の実績

ブレンダ氏はブリティッシュコロンビア州でテクノロジー業界を担ってきた企業を次のように紹介します。
「バンクーバーのデジタルエンターテイメント業界は、40年以上にわたりビデオゲームやハリウッド映画などの3D分野を幅広く手掛けてきました。Image Engine(カナダのVFX制作会社)が制作する「マンダロリアン」や「ゲーム・オブ・スローンズ」、Electronic Arts(アメリカに本社を置くコンピューター販売企業)が制作する「FIFA」や「NHL」などが代表作です」

その他にも世界に名だたる国際企業がブリティッシュコロンビア州を拠点に活動してきたとブレンダ氏は言います。
「1980年代のコンソールゲームが全盛であった時代には、Electronic Artsのようなゲームスタジオがブリティッシュコロンビア州の産業をリードしてくれました。そして、2000年から2010年代にさらに産業が拡大し、SEGAやDeNA、GREE、バンダイナムコ、Sony Pictures Imageworks、Industrial Light & Magicなども海外拠点として活動しております」
メジャーなゲーム会社としてはUnityやKabamなどもバンクーバー(ブリティッシュコロンビア州に属する都市)を本拠地に新しいプロダクトを開発しており、多くの企業がブリティッシュコロンビア州を選んできたことがわかります。それだけの魅力と実績がブリティッシュコロンビア州にはあるのでしょう。

アーリーステージの企業への支援策も実施

ブレンダ氏は振興テクノロジー企業に対しての支援策を次のように説明します。
「ブリティッシュコロンビア州政府は『InBC』というファンド基金を新たに立ち上げました。革新的な企業で、かつ成長途上にある企業に5億ドル投資をしようというファンドです。ブリティッシュコロンビア州はAR企業並びにVR企業の拠点であり、企業の発展には豊富な人材が必要です。それらの活動を支援することで生み出されるエンタメや教育、ヘルスケアなどの将来性に大きな期待を寄せています」「州政府としてもその活動を拡張していきたいと考えているため、成長途上の企業や資本が必要な企業には『InBC』が積極的に投資していきます。ブリティッシュコロンビア州としても前例がないほどテック業界に投資しており、この投資がどのような成果になるか今から胸を躍らせているところです」

さらに『BC Tech Fund』という振興テクノロジー企業に投資する1億ドル規模のベンチャーキャピタルファンドもあるようで、これらの支援がもたらす成果をブレンダ氏は次のように紹介します。
「現在ブリティッシュコロンビア州のテックセクターでは1万1000社以上が13万1000人以上を雇用して、非常に活発な活動を展開しています。2017年からは州内の総合大学において、6000人以上のテック人材を雇用しました。その結果、2020年から21年にかけて2万8000人以上の雇用が生まれ、北米の中でもブリティッシュコロンビア州は急速に伸びているところです」
最後にブレンダ氏はメタバースジャパンラボの活動やメタバースの動向について、次のように述べました。「Metaverse Japan Labは高等教育機関とビジネスのコラボレーションを創出する場であると認識しています。ブリティッシュコロンビア州で実施しているさまざまな活動と非常に親和性が高く、一致してる点も多いはずです。将来のテクノロジー開発に向けてさらなる協力や連携が必要なため、日本におけるメタバースの動向やメタバースジャパンラボの活動を引き続き勉強させていただけるのを楽しみにしています」

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