大阪城がメタバースに!「おもろい街づくり」

このセッションでは、「子どもたちの未来と地域社会への貢献」を目的とし、防災・教育分野での新たな取り組みが語られました。

毛利英昭 氏:株式会社Meta Osaka 代表取締役(左)/ 松石和俊 氏:株式会社Meta Heroes 代表取締役(中央)/ 馬渕邦美 氏:一般社団法人Metaverse Japan 代表理事/デロイトトーマツコンサルティング パートナー/一般社団法人 Generative AI Japan理事(右)

昨今、社会課題の解決という視点でのメタバースの可能性に期待が寄せられています。毛利氏は「大阪を世界一おもろい街に」というミッションのもと、自治体とも連携を図りながら、若者がグローバルで活躍できる環境作りに力を入れて取り組んでいると話します。

「例えばUEFMを使用し3DCGで超リアルに制作した再現した大阪城のマップ『SHOGUN’S Castle -大阪城-【High quality】』では、現実世界にあるかのような存在感にこだわりました。ゲームを通じて、大阪城の歴史や文化を国内外の若い世代に広め、地域の魅力を再発見してほしいとの思いがあります」

同じくFortnite上に公開したマップ『Namba Parks -Hawk’s Legacy-(なんばパークス・ホークスレガシー)』では、現在商業施設となっている場所に、かつて愛されたものの、今はない「大阪スタヂアム」(大阪球場)をデジタル空間に蘇らせています。若い世代に歴史とストーリーを伝え、地域で世代を超えた交流を生むことを目指した試みです。

「今あるものを再現するだけでなく、すでになくなってしまった建物や歴史、ストーリー、人々の思いを鮮明に蘇らせられるのはデジタルならではの強み。技術の活用にとどまらず、地域の歴史や文化を未来へとつなげる大きな一歩だと考えています」

遊びが学びに変わる!メタバース×リアル教育

さらに力を注ぐのが“リアル”なイベントです。「デジタルとリアルの垣根を越え、両方の可能性を子ども達に示していきたい」と毛利氏。

子どもたちがプロeスポーツ選手と交流したり、インフルエンサーやYouTuberなどと対話したりするゲームクリエイター体験などの場を提供。大阪府柏原市と連携し、市役所でeスポーツ大会を開催するなど、地域に密着したイベントも行っています。

「2025年の大阪関西万博では、子どもたちがさまざまな“リアル”体験を通じ、自由は発想を育むことをサポートする『こども万博』も開催予定です。メタバースと現実世界の架け橋となり、子どもたちの創造性を育むことで、彼らが未来を創造していく力をサポートしたい」と述べました。

毛利英昭 氏

Meta Osakaと協業した『SHOGUN’S Castle -大阪城-【High quality】』や『Namba Parks -Hawk’s Legacy-(なんばパークス・ホークスレガシー)』の製作・実装をはじめ、さまざまな地方自治体・団体と連携し、Fortnite、Roblox、Minecraftなど、多種多様なプラットフォームを活用したメタバース空間を開発するMeta Heroes。代表の松石氏は地元にいながら最先端の技術に触れ、グローバルに活躍できる人材育成の重要性を強調。「作る・伸ばす・集まる」という3つのコンセプトを掲げ、メタバース空間の開発からマーケティング、コミュニティ運営までを一貫して手がけ、若く才能あるクリエーターを輩出しています。

「単発のイベントでは子ども達が帰宅してしまえば作る・伸ばす・集まるを持続できない。体験したクリエイティブを自宅でも可能にできること、これが日本のDX教育に不足している部分」と話し、常設の施設をオープンし、誰もが等しく技術に触れられるスペースの提供した背景を語ります。

デジタルツインで「体験」する防災訓練

松石氏はまた、「地域創生や教育の問題と同様に、メタバース技術を活用し、解決できる社会課題」として「防災」を挙げます。

「エンターテイメントやゲームなど、暮らしを『楽しくする』メタバースは広がっています。一方で、防災のような本当に意識を高めるべきところにこそ、その技術は生かされるべきだと思うのです」

松石和俊 氏

自身の被災経験から「日常的な防災意識の低さや情報の不足、地域コミュニティの希薄化が災害時に顕在化し、より深刻な課題となっていると感じた」と話します。

そこで普段の生活の中で、防災意識を高め、その知識を広げるために次世代の防災シミュレーションの開発をスタート。FortniteやRoblox、Minecraftなどを活用したゲームメタバースの開発、AIを活用し実際の施設を活かしたデジタルツイン施策を展開、提供しています。

「実践的な防災教育を目的とし、11万7000か所ある日本の避難所をすべてゲーム化。自宅から避難所までの動線、経路を体験できるように再現しました。クイズ番組のような形式を取り入れ、専門家と協力して開発しています。防災意識の向上や安全な生活環境の確保はもちろんのこと、地域の避難所に対する理解を深めることにもなりますし、企業にとっては、CSR活動として地域貢献を可視化できるのもメリットになる」と松石氏。

毛利氏の“リアル”体験、メタバース空間での学びと現実世界での体験を融合させるというビジョンに共感。「今後も協力しながら、リアルな防災体験イベントやセミナーなども組み合わせより効果的な防災教育を提供していきたい」と熱く語り、セッションを締めくくりました。

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