ファンが集まり交流するのに適した「VRChat」

MVJマーケティングワーキンググループの発足にあわせて実施されたこのセッションでは、マーケティング領域におけるメタバース活用の可能性が議論されました。

山口 有希子 氏:パナソニック コネクト株式会社 取締役 執行役員 ヴァイス・プレジデント CMO DEI推進・カルチャーHUB担当役員(左)/ 岡崎路易 氏:株式会社大丸松坂屋百貨店 DX推進部 デジタル事業開発担当部長(中央左)/ 野田慶多 氏:株式会社EbuAction 代表取締役 / メタバース制作スタジオBORDER 代表(中央右)/ 長田新子 氏:一般社団法人Metaverse Japan 代表理事/一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(右)

最初に、各登壇者がビジネス活用されている主要なメタバースプラットフォームを紹介。
「VrChat」は、月間アクティブユーザーが2000万人、特にZ世代・α世代に多く利用されています。岡崎氏は、「今最も注目すべきVRプラットフォームの一つ」と強調します。

企業のVRChat活用事例として、日揮グローバル株式会社の「月面スマートコミュニティ」が紹介されました。

「月面のようにリアルの世界では行くことができない場所をVRで再現し、同社の事業活動や社会貢献などをエンドユーザーに向けて伝えています。遊びながら企業や自治体のことをユーザーに知ってもらう、ファン化へとつなげるのにVRChatは有効だと思います」(岡崎氏)

岡崎路易 氏

またVRChatではコミュニケーションが活発なだけでなく、VRワールド内で写真を撮影する「バーチャルフォトグラフィ」といったVRならではの楽しみ方ができます。さまざまな楽しみ方の可能性を持つVRChatは「ファンが集まりやすいプラットフォーム」だと岡崎氏は語ります。

広告要素をゲーム化して若年層に向けたアプローチ

続いて野田氏がVRゲームプラットフォームの「Fortnite」と「Roblox」を紹介しました。

「今では誰もが動画を作ってYouTubeで公開できる時代です。同様にユーザーが作ったゲームを公開するプラットフォームとして、特に成熟しているのがFortniteとRobloxです」
Fortniteはユーザー数5億人以上、月間アクティブユーザーが1億人を超える巨大プラットフォームです。日本国内でも多くのユーザーが利用しており、その8割をZ世代が占めています。

Fortniteにはマーケティングチャネルとしてさまざまな企業がコンテンツを公開しています。例えば日産自動車株式会社は未来空間と自動車を組み合わせたゲームを、熊本県はキャラクターが農業や城造りをするゲームをそれぞれ提供しています。

「各企業が自分たちの押し出したい広告要素をエンタメ化・ゲーム化し、特に一般的なマーケティングチャネルでは届きにくい若年層に向けたアプローチをしています」(野田氏)

野田慶多 氏

一方で欧米で急成長中のプラットフォームRobloxは、ファミリー層向けのコンテンツが充実しています。例えば株式会社タカラトミーは新しい玩具のプロモーションとして対戦ゲームを制作、ゲーム内に新商品の要素を取り込むことで訴求・販促につなげています。

また東京都はインバウンド集客を狙い、東京の魅力を伝えるゲームコンテンツを公開しています。野田氏は「ゲームコンテンツは動画やテキストと異なり、言語を問わないので世界中に届けられるのがメリット」と強調しました。

メタバースの活用で広告のあり方に変化

続いて長田氏が「ブランドエンゲージメントや体験価値など、マーケティング観点で重要なものをメタバースでも作れるのか」と質問すると、岡崎氏は「Xでアバター販売の広告を流したところ非常に好評を博し、ブランドエンゲージメントが如実に上がっているのを実感した」と回答しました。

長田新子 氏

また「新しい形のマーケティングエンゲージメントやキャンペーンの可能性はあるか」という長田氏の質問に対して、野田氏は「社会課題に対して仰々しいメッセージを届けてもポジティブに捉えてもらえない。そこをゲーム化することで興味を持ってもらうことができる」とコメント。

岡崎氏も「アバターを購入すると冷凍グルメが当たるキャンペーンを仕掛けたところバズった。リアルの購買体験とメタバースの体験を紐づける活用は可能だと実感してる」と、キャンペーンの可能性について言及しました。

これを受けて山口氏は「ゲームとしてプレイしたものが、実は企業からのメッセージだった。広告の使い方が変わってきている」と感想を述べました。

山口 有希子 氏

VR空間ならではの価値提供でファンを囲い込む

セッション全体を通じて山口氏は「従来は網を大きく張って顧客を獲得するのがマーケティングだったが、これからはユーザーが楽しめるゲーム化やコミュニティなどの体験を提供することが求められており、マーケティングのHOWが変わる」と話すと、長田氏も「3D空間ならではのコミュニケーションや価値が生まれるので、とくに若年層向けの新しいマーケティングとして注目したい」と続けました。

最後に岡崎氏は「少数の熱狂的なファンを掴み、ファンと一緒に過ごせるのがメタバース空間。ご興味のある方はぜひワーキンググループにご参加いただければ」と締めくくりました。

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