制約なく誰でも楽しめるメタバース

このセッションではメタバースの社会実装について、メタバースビジネスを提供している事業者の視点から現在地と展望について語りました。

道下 剣志郎 氏:SAKURA 法律事務所 代表弁護士 / 内閣府知的財産戦略推進事務局 メタバース官民連携会議 有識者 / バーチャルシティコンソーシアムアドバイザリーボードメンバー(左) 光田 刃 氏:トランスコスモス株式会社 CX事業統括メタバース推進部 副部長 マーケティング戦略部 部長(中央) 田中 大貴 氏:株式会社Urth 代表取締役CEO / 早稲田大学創造理工学部研究科建築学科博士課程(右)

株式会社Urth CEOの田中氏は「2020年にVR上でショップを作って物を売りませんかと言っても誰にも相手にされませんでした」と言います。

「多方面の方に声をかけたんですが意味が分からないといわれ続けました。しかし、2021年に入るとベンチャー企業だけでなく大手企業からも「メタバースでのコミュニケーションは今までのツールとは違う」とわかっていただけるようになってきたんです。運用していく中でPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)に反映される形で活用いただいている事例も出てきています」

「今までのメタバースはイベントで利用される機会が多く、SNS的な役割を担っている面が大きかった」と田中氏はいいます。イベントがある時のみメタバース空間にログインし、それ以外の時間は利用しない利用者も多い点が課題となっています。“毎日利用したくなるメタバース”を提供できればビジネスの観点で見ても、顧客と常に接点が持てるため有利に働くのではないでしょうか」

田中 大貴 氏

利用者のユーザビリティを高めるために、田中氏は株式会社Urthが提供するメタバースの特徴を次のように説明します。

「弊社が取り入れているのはWeb型のメタバースで、企業のオウンドメディアや自社のWebページの代替になる形で提供しています。ヘッドセットやアプリのダウンロードを必要とせず、URLをクリックするだけで利用できる点が特徴です。アプリケーションで利用できるメタバースもありますが、スマートフォンもしくはヘッドセットにアプリをダウンロードする必要があります。利用者によっては手間に感じてしまう行為をURLをクリックするだけで利用できるようにしたことで、制約なく誰でも楽しめるメタバースが提供できていると感じています」

コミュニケーションチャネルとしてのメタバース

モデレーターである道下氏の「トランスコスモスはどのようにしてメタバース推進部を立ち上げたのか」という問いに対して、マーケティング戦略部の光田氏は次のように返答しました。

「メタバースの関連企業以外では、『自分たちにメタバースは関係ない』と思っている企業が本当に多いんです。けれど、マーケティングや営業部門などの担当者と話していくうちに『自分たちのビジネスだったらこういう使い方ができるんじゃないか』と形が見えてくることがあります。メタバースは距離の離れた人たちとも繋がれ、様々なステータスを持った人でも活用できる。そういった方々が多くのコミュニケーションを生み出していける支援をできないかと相談に乗っていった結果、今の形になっていきました」

光田氏はメタバースをコミュニケーションチャネル(顧客とのコミュニケーション手段)の1つと考えており、トランスコスモスが今まで提供してきた通話やSNS支援の延長線上にメタバースがあるのだといいます。

光田 刃 氏

「メタバース利用の目的を明確にし、マネタイズポイントや達成すべきKPIをどのように設定していくか。そういった相談を受けるケースが多くなっています。メタバースのイベントは多くありますが、お客様に継続して来ていただくのはかなりハードルが高いことなんです。一過性のPRで終わらずコミュニケーションチャネルとして社会実装できるように、ワークショップのような形で各企業様と深めていければと思います」

メタバースビジネスの展望

「今後どのような形でメタバースはビジネスに利用されていくか」について、自治体や企業への導入案を光田氏が次のように述べました。

「自治体であれば窓口の一部をメタバース化すると、身体的・精神的な問題で自治体に来れない人へサービスが提供できるようになると思います。さらにただ提供するだけでなく、メタバースでしか得られない体験、たとえば教育や就労などを実装できれば、自治体が抱えている課題を解決できるのではないかと考えます。また、イベントでの企業紹介にVRゴーグルを活用すれば資料の持ち込みは不要になります。今後はBtoBの営業スタイルもメタバースを使うように変わっていくかもしれません」

最後に道下氏が、弁護士としてメタバースビジネスの展望を次のように語りました。

道下 剣志郎 氏

「BtoCにも応用が効きそうですね。私は弁護士として司法の敷居の高さを痛感し、気軽に相談しやすい法律事務所としてメタバース事務所をスタートしました。法律に疑問を感じても事務所に相談しに来てくれる人は誰もいません。それだけ法律や弁護士に相談するハードルが高いのだと思います。風邪をひいたら病院へ行くように、メタバース空間で気軽に弁護士へ相談できるようになれば、社会的な意義があるのではないでしょうか」





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