沖縄の伝統芸能をVRゲームで体験

このセッションでは、Metaverse Japan自治体ワーキンググループのメンバーが、自治体のメタバース活用事例と今後の可能性について語りました。

宮里 大八 氏:沖縄市 経済文化部観光スポーツ振興課主幹 / 一般社団法人沖縄STEM教育センター代表理事、宮里大八国際交流基金代表(左)
杉本 直也 氏:静岡県 デジタル戦略局 参事(中央)
小玉 祥平 氏:三豊市教育センター長(右)


沖縄市のITワークプラザは、アジア最大のモーションキャプチャースタジオです。ここでのメタバース事例を、宮里氏は次のように話します。

「沖縄で300年ほどの歴史をもつ、歌舞伎やミュージカルに近い『組踊』というものがあります。これをモーションキャプチャーで取り込んで、VRで体験できるゲームを作っています。沖縄の曲調に合わせて踊りながら敵を倒す内容ですが、那覇空港での体験会では子どもたちに非常に人気がありました」

ほかにも、モーションキャプチャーはさまざまな分野で活用されていると宮里氏は続けます。

「沖縄の空手のマスターの演武を、VRで世界中の門下生がいろいろな角度から見られる取り組みも行っています。ほかにも沖縄の伝統舞踊であるエイサーや、スポーツではサッカーをモーションキャプチャーで取り込み、そのデータをさまざまなコンテンツに展開しています」

宮里 大八 氏


宮里氏は沖縄の企業『あしびかんぱにー』による、観光を盛り上げる取り組みについても紹介しました。

「メタバース上に沖縄を再現した『バーチャル沖縄』というものを作っています。イベントには11日間で約10万人のアクセスがあり、火災で燃えてしまった首里城を復元したり、国際通りでみんなで空手をしたりといった体験を提供しました。また、沖縄市出身のアーティスト『ORANGE RANGE』の21周年記念として、今はなくなってしまった『クラブピラミッド』をバーチャル沖縄に再現し、ファンを集めたライブビューイングも行いました」

今後はスポーツでの活用や万博での取り組みも


また、いま沖縄で非常に熱い話題となっているバスケットボールのワールドカップやBリーグのオールスターゲームでも、バーチャル技術の活用が期待されているとのこと。

「ワールドカップはライセンスの問題が厳しいものの、今後バーチャル上でいろいろな展開ができるのではと期待しています。また、Bリーグチームとはバーチャルやテクノロジーを使って何かできないか相談させていただいているところです」(宮里氏)

さらに、2025年の大阪万博では姉妹都市である大阪府豊中市と協力した取り組みも検討中だといいます。

「1970年の大阪万博では、沖縄のエイサーが派遣された歴史もあります。2025年にはバーチャルでエイサーの演舞を行い、大阪を盛り上げていく企画を考えています」(宮里氏)


メタバースが地域のコラボレーションを加速させる


セッションで紹介された沖縄の事例のなかには、モーションキャプチャーで取り込んだエイサーの踊りをキャラクターの動きに割り当てているものがありました。杉本氏はこの映像に注目し、『バーチャル静岡』とのコラボレーションの可能性を次のように語ります。

「沖縄の映像では背景にCGが使われていますが、『バーチャル静岡』は、実際の静岡県から取得した縮尺1/1の点群データを使うことができます。つまり、リアルな静岡の風景の中で、沖縄のキャラクターがエイサーを踊るといった表現もできるんです」(杉本氏)

杉本 直也 氏


それを受けて宮里氏は、「それが実現できれば、踊りなどの伝統をいろいろな形でコラボレーションしていける」と前向きな姿勢をみせます。

小玉氏も、「コラボレーションのハードルが下がることはデジタルメタバースのよいところ」とその意見に同調しました。

「静岡県とのコラボで静岡にも沖縄ファンが増える可能性があるし、逆もありえますよね。双方の地域の方に”こんなにいいところがあるんだ”ということを知ってもらうきっかけになることはすばらしいです」(小玉氏)

小玉 祥平 氏


メタバースを活用した文化継承に期待


最後に、それぞれがメタバースを活用した文化継承への期待や可能性について語りました。

「子どもたちが地元の文化を知らない、関心を持ってくれないという問題があります。でも、バーチャルにしたらそれだけで興味を持ってくれる人たちもいるでしょう。文化を体験するハードルも下がるのではないかと思っています」(小玉氏)

「組踊などの伝統芸能は、格式が高いイメージもあり継承が難しいのが課題です。沖縄には村々で行う豊年祭という秋祭りのようなものがあり、そこでは子どもたちも含めて組踊をします。このような文化を継承していけるように、きちんとデジタル化して過去の映像を見ながら練習できるようにしたいですね」(宮里氏)

「踊りや空手などは、モーションキャプチャーで動きを記録して、練習する子どもたちがいろいろな角度から手や体の動きを見ることができれば習得も早くなりそうですね。大人がなんとなくの表現で伝えるのではなく、デジタルでわかりやすく伝えていくことは大事だと思います」(杉本氏)

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