時空を超えたスポーツの熱狂体験 ー世界初AIR RACE Xー

Metaverse Japan Summit 2023最初のセッションは、この秋に開催される「AIR RACE X」の発表会を兼ねたものでした。

長田新子 氏: 一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長/SOCIAL INNOVATION WEEK エグゼクティブプロデューサー/一般社団法人シブヤ・スマートシティ推進機構 理事(左)   室屋 義秀 氏:LEXUS PATHFINDER AIR RACING / エアレース・パイロット (中央左)  渡邊信彦 氏: 株式会社Psychic VR Lab 取締役COO(中央右)              豊田啓介 氏: 東京大学 生産技術研究所特任教授 建築家(右)

室屋 義秀 氏

“空のF1”ともよばれるエアレース は、5〜6キロの距離を飛んでタイムを競う競技で、約60秒でレースが決着します。初速は370キロにも及び、パイロットの体には体重の10〜12倍の力がかかります。そのため、モータースポーツの中で最も激しく、最速のレースといわれています。
今回発表されたAIR RACE Xは、そんなエアレースにXR技術を取り入れたチャレンジです。まず、世界各地のパイロットが共通のコースレイアウトをもとにそれぞれの地域で実際に飛行を行い、データを計測。そのフライトデータをもとにAR技術で映像化するというものです。
大会当日は、XRアプリ「STYLY」を渋谷の空にかざすことで上空を機体が駆け巡る様子を観戦でき、同時にその様子がオンラインで全世界に配信されます。
守屋氏は、AIR RACE Xを「空間と時間の次元を超えた5次元のスポーツ」だと話します。
「今までのモータースポーツは1か所に機体が集まってレースを繰り広げていましたが、コロナの影響で実施が困難になりました。そこで、リモート会議のように別の空間で実施すればよいのではという発想が生まれたんです。時差の問題も解消できれば時間の次元も超えられます。AIR RACE Xは3次元のモータースポーツから、時間と空間を超えた5次元のスポーツになると確信しています」

室屋 義秀 氏

モータースポーツとXR技術は親和性が高く、フライトデータや操縦データをXRで再現しやすいとのこと。再現された映像を見ることによって、パイロットの繊細な操縦技術が伝わってくるはずです。
このイベントは、2023年2月に開催したMETAVERSE JAPAN SUMIT での出会いがきっかけになっているとのこと。モータースポーツとしてのエアレースが新たな技術と人に出会い、AIR RACE Xが生まれたのです。
守屋選手はAIR RACE Xの意気込みを聞かれると次のように答えました。
「解説も入るので各選手の違いがハッキリ見えると思います。リモート開催でもリアルで行うレースと遜色ない、よりデータの精度が求められる厳しい戦いになるでしょう。我々のチームは初開催の大会で初優勝を目指して頑張りますので応援をよろしくお願いします」

各国選手の飛行データを渋谷の空に再現

発表回に続いて、AIR RACE X実現に関わった3氏と守谷選手によるトークセッションが行われました。

長田新子 氏

長田氏からXRとスポーツの可能性を問われた渡邉氏は次のように語ります。
「このような大会を都市レベルで実現し、なおかつモータースポーツとの融合を実現できたのは世界初だと思います。ホストシティである渋谷の都市をデジタルツインで再現し、バーチャルデータと重ね合わせる仕組みを作りました。大会の時には世界各地に渋谷を模したモデルを配布して、各国の選手は自分たちのホームでそのデータをもとにレースを行います」
デジタルツイン空間では半径約10キロの渋谷を再現。そこに各選手の飛行データを記録していきます。実現にあたっては、いかに迫力を出すかが1番の課題だったと渡邉氏は言います。
「今までのゲームでは再現できなかった部分をXRで実現したことで、eスポーツとして殻を破ったはずです。本当にビルの間をすり抜けていくなんてリアルの渋谷では絶対実現できません。それらの体験をテクノロジーとアイデアで実現できました」

渡邊信彦 氏

「テクノロジーのおかげで、飛行機に興味がなかった人の目にも触れる機会が増えることは喜ばしい」と守屋氏は次のように続けました。
「どこでもアクセスできるようになると、スポーツの魅力が一気に広がるんじゃないかと思います。また、選手は今後どのようにAIR RACE Xが継続されていくのか注目しているんです。徐々に作り上げられるデジタルツインの渋谷の映像を見て次第にイメージが湧いてきているようで、出場する選手たはみなワクワクしています」

皆で盛り上がることで街の価値も高まる

豊田氏は、「渋谷の価値を高めるために魅力となる点は?」という問いに建築家視点で次のように答えます。
「今のところメタバースは個人個人がバーチャル空間でつながることがメインで、実空間で共通体験を感じる領域にはいたっていません。一緒に盛り上がる要素が持続性に大きく関わるため、まずは興奮が伝播する場の仕組みやノウハウをみんなで作っていきたいと考えています。皆で盛り上がる場を提供できれば、渋谷の価値もさらに高まるのではないでしょうか。その後はグローバルに展開していき、世界中で開催されればAIR RACE X がより魅力的なものになっていくはずです」

豊田啓介 氏

新しい技術を共通体験し、フェス的な盛り上がりが生まれる。渋谷の価値を高めるためにも、AIR RACE X はなんとしても実現させたいと渡邉氏は言います。
「どれだけ臨場感を高められるかが鍵となるので、、多くのパートナーと渋谷を盛り上げていきたいと思っています。Web3の考えを取り入れてコミュニティを作ったり、NFTを出したりと、今後もやれることを考えていきます」
最後に守屋氏がAIR RACE X の今後の展望を次のように語りました。
「パイロットとしては2025年にワールドチャンピオンシップ化できるよう、僕らも戦っていきます。来年以降はマスタークラスだけでなく、若いパイロット層も競技に参加できる枠組みを作る予定です。大会を積み重ねていき、最終的にはリアルのチャンピオンシップで決着をつける戦いができたらいいですね。AIR RACE Xの頂上決戦がリアルで行われたらすごく盛り上がるんじゃないかなと思います」

 



 



TOP