子どもたちがマイクラでまちづくりを考える


仮想空間で建物をつくったり、サバイバルをしたり……教育現場で利用されるようになった人気ゲームのマインクラフト。そのマイクラをまちづくりに活用するのが高松市です。

小宮 昌人 氏:JICベンチャーグロースインベストメンツ イノベーションストラテジスト(左)
伊賀 大介 氏:高松市 都市整備局都市計画課主幹(右)


きっかけは、2023年のG7広島サミットにともなって22年9月に開催された高松都市大臣会合です。会合の重要なテーマの1つである「デジタルトランスフォーメーション」に、高松市が10年以上取り組んできた都市の再構築を組み合わせる試みを進めることになりました。

2022年度には、デジタル田園都市国家構想推進交付金事業としてのインフラ情報のデジタル化や、3D都市モデル「PLATEAU」事業などがスタート。それらを進めていくなかでも課題がありました。

「現在、高松駅周辺は大規模開発が行われています。なかでも開発が集中するサンポートエリアは、まちづくりの顔となっていくという視点からエリアマネジメントが求められています。ただし、行政が自己満足で行ってもよい結果にはならないので、市民参画、官民連携をうながす仕掛けが必要でした」(伊賀氏)

伊賀 大介 氏


そこで発案されたのがマインクラフトの活用です。高松市がオープンデータ化するインフラデータと、3D都市モデル「PLATEAU」のデータを使い、マインクラフト内にサンポートエリアを再現。子供たちにまちづくりを考えてもらう「アイデアソンコンテスト」の実施が決まりました。

メタバースとリアル空間をあいまいにすれば未来は開ける


「メタバースはこれから間違いなく注目されていく技術ですが、まだまだ市民にとっては近い存在とは言えません。デジタル上の地図をマネジメントツールとして使いながら、メタバースとリアルな空間をどれだけあいまいにできるかを仕掛けていくことが重要だと思っています。アイデアソンで出たアイデアからは実際にいくつかのコースを作る予定で、リアルとマインクラフトを連動させたイベントも実施していきたいと考えています」(伊賀氏)

小宮氏は、「取り組みを進めるにあたって一番苦労した点と、その打開方法」を伊賀氏に問いかけます。

小宮 昌人 氏


「ここに高松の人はいないですよね(笑)。やはり古い役所の体質が一番の抵抗です。ただ、民間の方からはポジティブに応援していただけますし、組織の中でも『この事業は間違いない』というレベルで共有できれば壁を越えられると思っています」(伊賀氏)

DXの人材はどうやって確保する?


「自治体のDXでは人材不足が深刻な問題になっている」という小宮氏からの問題提起に対して、伊賀氏は「高松市でもデジタルに精通した人材は限られている」といいます。

「私自身も、もともと土木エンジニアでデジタルには疎いので、民間のアドバイザーに助けを借りながら進めています。もっとも困っているのは現実の課題をしっかり読み解いて、制作提案できるアーキテクトがいないことですね」

さらに、自治体がDX化を進める上で必要な知見としては、「どうやってDXと社会課題を紐付けて、何をKPIとして設定するのか。全体の構造を考えることができる力」を挙げます。

「まちづくりには課題がたくさんあります。まず手をつけることは、それらの課題のどこにフォーカスして、何を得ようとするかをしっかり整理することではないでしょうか」

今後は分野を横断した取り組みも


マインクラフトに取り組む子どもたちには、「『ゲーム楽しいな』で終わらずに、世の中のためになることを感じてもらえたら。将来的には子供たちの中からデジタル人材やまちづくりに参加する人が出てきてほしい」と期待を寄せる伊賀氏。

今後の事業の展望については、「たとえば健康福祉系や環境系の人と一緒に取り組みを進めるなど、分野を横断していきたい」と意気込みをみせます。

セッションの最後には、イベントに参加する自治体関係者に向けて、次のようにメッセージを送りました。

「行政の人間は市民から税金を託されている立場ですが、それをどれだけよいサービスに変えることができるか、それを楽しくできるかという視点をしっかり持って、課題を見つけることが大切だと思っています」(伊賀氏)

TOP