「LifeTech KOBE」は起業しやすい街の旗印
神戸市が、米カリフォルニアのアクセラレーター「500 Global(旧500 Startups)」と連携、起業家支援プログラムを開始したのが2016年のこと。2020年には京都・大阪と共に「内閣府グローバル拠点都市」に選定。2022年にはスタートアップの立ち上げや成長をサポートする公式サイトLifeTech KOBEを立ち上げるにいたりました。この経緯について織田氏は次のように話します。
「神戸市では震災からの復興を契機として、国際的な医療研究機関や企業の誘致に力を入れてきました。ライフサイエンスなどテクノロジーを活用する分野を中心にイノベーティブに挑戦できる『神戸ならでは』の気風を育ててきました。若い世代に向け『起業しやすい』と感じてもらえるまちづくりの実現に尽力しています」
オーダーメイド型の起業家支援型プログラム、リアルテック領域の技術シーズに特化したメドテックグランプリなど事業化促進に向けた多角的な支援を実施。中でも日本全国の自治体が抱える課題をスタートアップ・民間企業と自治体職員が官民協働で解消をめざす「Urban Innovation JAPAN(UIJ)」が注目を集めています。
「UIJではさまざまな実証実験を行っています。例えば神戸市消防局ではVR、ARを導入した防災体験では、参加者が地震体験や仮想避難所の設営を体験。防災体験は小学校などへの出張サービスでも活用されています」と織田氏。
すでに新進気鋭のスタートアップ企業が神戸に拠点を移しています。大規模仮想空間基盤「XR CLOUD」をリリースしたmonoAI technology株式会社、街遊びARサービスで知られるXR CITY LAB incなどがその代表格といえるでしょう。
織田氏は「神戸阪急の屋上でXR CITYの「白猫プロジェクト NEW WORLD‘S」を手がけています。また東京の対面会場とXR CLOUDのVR会場のハイブリッド形式で「2022神戸のつどい」を開催し、大盛況に終えることができた」と手応えを熱く語りました。
海外のSU支援に取り組む「シブデック」
神戸市とスタートアップ支援で連携協定を締結している渋谷区。VCや起業家コミュニティ、実証実験のフィールドなどにおいて、互いに補完しあういい関係を築いています。
「2年前から神戸市と共同でプロジェクトを手がけつつ協力体制を整えてきた。昨年までに9自治体が参加するなど輪は広がり、私たちと神戸市、札幌市で連携し女性起業家育成プログラムも手がけた」と田坂氏。
渋谷区は、Shibuya Startup Deck(シブデック)というチームを立ち上げ、スタートアップを産官連携で支援。シブデックでは、課題別に議論を深め具体化させるために「不動産」「金融」「人材」「海外企業誘致」「文化」「実証実験」の各Subcommittee(部会)を設け、それぞれで動いているのも特徴の1つです。
たとえば文化部会では新技術を使ったアートや音楽活動にも力を入れており、最近では「ENLIGHTEN(エンライトン)」渋谷パブリックアートプロジェクトを手がけています。
「渋谷駅の前の横断歩道の柱や工事の際に使用するフェンスを素材としてアーティストに提供し、絵を描いてもらいました。その作品をNFT化する活動で、アートを街のイメージアップに役立てようという試みです」(田坂氏)
また海外からのWeb3関係のスタートアップ誘致にも積極的。ビザ取得や登記などの手続きを一元化しサポートするスタートアップビザ制度を採用。国内外問わず、新たな志を持った起業家の進出支援を熱心に行っています。海外からも注目の的となり、Web3のイベントなど新たなプロジェクトが始動しています。
「世界的なNFTアーティストで『PleasrDAO』でも知られるEmily Yang(エミリー・ヤン)氏がアニメーターの支援を目的とした『shibuya.xyz』をスタート。氏は渋谷のカルチャーに愛着を持っていて、共にアニメを作ろうと動いています」
加えて海外のDAOからも渋谷は人気だと耳にすることもある、と話す田坂氏。ただDAOが厳密には法人とはいえないため、入国が難しいなど課題も多いといいます。「規制緩和や特区的な役割を含め、自治体として国にも働きかけていきたい」と締めくくりました。