官民6団体がメタバース事業を紹介


官民6団体が登壇したトークセッションでは、はじめに各団体がおのおの取り組むメタバース事業について紹介しました。

長田 新子 氏:一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(左)
林 真史 氏:大阪府・大阪市 万博推進局 事業推進部 出展企画課 担当係長(左から2番目)
金山 淳吾 氏:一般財団法人渋谷区観光協会 代表理事(左から3番目)
中平 公士 氏:文化庁 文化経済・国際課 課長補佐(右から3番目)
黒田 玄 氏:文部科学省 Policy Making for Driving MEXT(ポリメク) メタバース検討チーム代表(右から2番目)
渡邊 信彦 氏:株式会社Psychic VR Lab 取締役 COO(右)


このうち、金山氏と長田氏は、渋谷区観光協会と渋谷未来デザイン、KDDIの3者が2020年1月に発足させたプロジェクト「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」の取り組みについて説明しました。

同プロジェクトは発足後、AR/VR技術を活用した渋谷区公認のメタバース空間「バーチャル渋谷」や、エイベックス・エンタテインメントの音声ARアプリ「SARF(サーフ)」を活用した街歩きイベントなど、多彩な企画を展開。こうした取り組みのイメージについて、金山氏は次のように語りました。

「私がイメージしているのは、リアルな渋谷の街の周りにARやXRといった、リアルな街に付加価値を与えるデジタルレイヤーがある状態です。さらに、その周りにVRを含めたメタバースの概念があります。そうしたなかで、どういったコミュニケーションプラットフォームを作っていくのか、どういうエンターテインメントをユーザーに届けていくのかを考えたいと思っています」

金山 淳吾 氏


国の取り組みとしては、黒田氏が文部科学省のVRSNS事業について紹介しました。

2021年6月より始めたVRSNS事業は、若手職員を中心とした文部科学省の政策立案プロジェクト「Policy Making for MEXT(ポリメク)」のメタバース検討チームが中心となって始めたものです。

黒田氏は、自身のVRSNSユーザーとしての体験から得られた知見について、「メタバースの本質は人との交流である」と語ったうえで、「文科省所掌の教育やスポーツでのメタバース活用に向け、検討会を立ち上げるとともに、検討会の中で有識者や民間の専門家を招いた勉強会を開いている」と話しました。

 

ユーザーがメタバースを介して実際に街を訪れるシステムを形成


続いて、「東京・大阪という都市からみた可能性や課題は」という議題に対し、金山氏は、「渋谷は観光資源がすごく少ない」ことを挙げます。ハチ公銅像やスクランブル交差点、代々木公園といった有名スポットはいずれも無料で入ることができるため経済的価値をあまり生まず、一方で、新たなテーマパークのようなものを作るには土地がないという状況。そこで必要となるのがXRの技術だといいます。

「たとえば、ARのUGC(ユーザー生成コンテンツ)のレイヤー上にアーチストがテーマパークコンテンツを作り、ユーザーはそれに連動した現実の場所に課金して経済を創出する取り組みが、新しい観光ビジネスのヒントになると思っています。また、『バーチャル渋谷」のようなVRの空間であれば、ユーザーがVRにアクセスして面白そうなレイヤーを見つけた後、実際の街に来てお金を払って体験してもらうようなエコシステムができるのではないでしょうか」(金山氏)

そして、都市連動型メタバース「バーチャル大阪」に取り組む林氏は次のように話しました。

「バーチャル大阪はイベント時にはたくさんの方に体験いただいていますが、イベントがないときは人が少ないという課題があります。そこで、バーチャル大阪を発展させていき、いろんな方に体験していただくとともに、現実にも大阪に来ていただけるしくみが今後必要だと感じています」

林 真史 氏

 

ユーザーが自発的に活動するUGCのレイヤー形成の重要性


続いて、「常時人がいるメタバースやバーチャル空間を作るためには、どうすればよいか」という長田氏の問いかけに対し、黒田氏は次のように語りました。

「運用者が持続的にイベントを作り続けるエコシステムをいかに実現するかが課題だと思っています。最終的にはUGCをどう確保するかがテーマになるのではないでしょうか。具体的には、渋谷駅前での弾き語りやダンスパフォーマンスといったユーザーの自発的な活動を引き起こせるUGCのレイヤー・ステージの確保に活用の可能性があると考えています」

黒田 玄 氏


クリエイターがUGCを自発的にアウトプットする環境を作るためには、メタバース上のレイヤー形成はむろん、文化の醸成が欠かせません。中平氏は、メタバースの文化振興の可能性について次のように語りました。

「国としては、ビジネスや観光で弱いと思われている地域に対してメタバースやVR、ARといったテクノロジーの提供を通じて手を差し伸べることで、強みを発揮してもらいたいと考えています。目立たなくても、それぞれの地域が個別の文化を持っているのが日本の強みです。とくに『大都会』や『大自然』はテクノロジーによって高付加価値化が可能だと感じています」

中平 公士 氏

 

地元で盛り上げられるクリエイターエコノミーを作る


地域がテクノロジーを使ったコンテンツを作る方法に特化していくうえで重要になるのは、クリエイタープラットフォームの形成です。渡邊氏は、これについて次のように語りました。

渡邊 信彦 氏


「プラットフォームは技術的に素晴らしいものを作ったとしても、後発のプラットフォームに凌駕される可能性があります。一方、強豪に抜かせられないのは、クリエイターエコノミーですね。クリエイターエコノミーをプラットフォーム上に持っていると、どんなに新しいプラットフォームが出てきても乗り換えできません。私たちが新潟市との連携して取り組んでいる、市民にXR技術をレクチャーする事業『にいがたXRスクール』のように、地元で盛り上げていける文化づくりが必要だと思っています」

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