地方創生とWeb3は相性がよい

最初のセッションとなる「メタバースが拓く新しい日本のあり方」ではまず、平氏がオンラインで登壇。

この前日も衆議院予算委員会で全閣僚を前にWeb3について説明を行ったという平議員は、「α世代とよばれる若い世代は、何の違和感もなくメタバースの世界で動き回り、この先さまざまなビジネスの発想を生み出していくはず。そういった若い才能が挑戦したいと思ったときに、日本のルールや税制が足かせにならないようローメーカーとしての仕事を果たしていきたい」と話します。

平 将明 氏:衆議院議員 自民党web3プロジェクトチーム座長(上)
長田新子 氏:一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(左)
馬渕 邦美 氏:PwCコンサルティング合同会社 パートナー 執行役員 元 Facebook Japan株式会社 執行役員(中央左)
伊藤 穰一 氏:株式会社デジタルガレージ 取締役 共同創業者 チーフ・アーキテクト(中央右)
宮田 裕章 氏:慶応義塾大学 医学部 教授(右)


さらに、地方創生とWeb3の可能性についても指摘。

「地方の価値を顕在化して最大化し、グローバルに広めていくという意味で、地方創生とWeb3は相性がよいと考えています。今後は、ふるさと納税とNFTをかけ合わせた地方創生のモデルもどんどん出てくるのではないでしょうか」(平氏)

 

3つのアップデートを発表

続いて、Metaverse Japanの3つのアップデートとして、メタバースシンクタンク「Metaverse Japan Lab」の設立と、メタバース特化インキュベーションプログラム&アカデミアの開始、そして、「世界を主導するメタバース産業立国に向けた5つの柱」としての政策提言の実施が発表されました。

「Metaverse Japan Lab」は、名誉顧問にカーネギーメロン大学の金出武雄氏、顧問に東京大学の江崎浩氏を迎え、アドバイザーにはMetaverse Standard Forum代表のNeil Trevettや、Metaverse Japan理事の宮田裕章氏や豊田啓介氏、同アドバイザーの玉城絵美氏が就任。

また、アカデミアは、おもに大企業を中心に、メタバースのプランニングを行う担当者の参加を想定。7日間のプログラムを通してメタバースのプロフェッショナルとして必要なものを身につけられる内容となっています。また、ベンチャー企業向けには、事業を支援するアクセラレータも用意されます。(馬淵氏)


日本のWeb3は一般化のフェーズ


2022年3月にMetaverse Japanが設立されてからの約1年を振り返り、宮田氏は、「NFTの過剰な期待が膨れ上がり、大きな事件もあったが、むしろ良質なものが粛々と育っているよい状況になっている」と話します。

さらに、今注目すべき技術としてジェネレイティブAIを挙げ、「メタバースでは今後、CGの制作が置き換えられ、作り方もスピードも間違いなく変わるはず」と予測します。

宮田 裕章 氏


伊藤氏は、アメリカと日本のweb3をとりまく状況の違いに言及。

「アメリカのweb3は投機目的の人が多い傾向がありますが、日本では大企業や市町村がweb3に参入し、産学官が連携し有機的に取り組んでいる状況があります。日本は『一般化して磨く』ことが得意なので、これからの一般化フェーズでは、海外の事例よりも面白いものが出てくるかもしれません」

教育を変えることは不可欠


一方で、日本が世界に後れをとらないために取り組むべきこともあると宮田氏は指摘します。

ChatGPTの登場で、文章を作るうえで重要になる能力も変わってくると思います。写真の世界でも10年以上前に似たような変革が起き、撮影技術を持った人ではなく、センスのある人が生き残る時代になりました。弁護士も同じで、六法全書を正しく記憶している人がよい弁護士というわけではないと思います」

そのような変化が起きているにもかかわらず、入試では人間の頭だけで考えて正解を導くことを求めている点を指摘。「ここを変えていかないと、若者の時間を浪費させてしまう」と警鐘を鳴らします。

伊藤氏も、「教育はもっと変わらないといけない」とこれに同意。

「私の知人のアメリカの教師は、ChatGPTを活用し、AIを活用し何ができるかを問う授業をすでに行っています。これまでにも学校と一般社会との間には溝がありましがたが、より顕著になっていくはずです。これからさらに教育改革が進むことを期待しています」

伊藤 穰一 氏

 

地方自治体はプラットフォームの共通化を


さらに、話題は今回のイベントのテーマである地方創生に。伊藤氏は、地方自治体の使うシステムのプラットフォームを共通化していくことの必要性を指摘します。

「市町村のサービスは、裏側のシステム部分を共通化して、表側の部分でそれぞれの違いを出していくのが理想。でも現実は逆で、裏側のシステムはバラバラなのに仕上がりは同じようなものばかりになっています」

宮田氏はこれについて、「新型コロナワクチンのアプリでは、まさにこの状況が起きた」といいます。

「地方自治体がそれぞれ個別にワクチン接種アプリを作ったために、100ベンダーくらいが動き、数百のシステムが作られることになりました。最初から数ベンダーで規格を作り、すべてAPIでつなげるようにしたうえで、運用方法で各自治体のオリジナリティを出すのが理想だったと思っています」

さらに、病院のシステムも同様だと指摘。かつては個別に開発することが丁寧だとされていたが、いろいろなシステムがつながる今の時代にはまったく適さないものとなっているといいます。

「状況が大きく変わっていることを理解したうえで、自治体や民間、アカデミアが一緒になって皆でアーキテクチャを作っていくことが大切な時代となっています」(宮田氏)

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