XR・メタバース総合展2026【夏】特別講演レポート③
XR × AIエージェント・フィジカルAIで進化する技術伝承と人材育成
~現場DX時代の技能継承・教育設計・組織変革~

Japan Spatial Forum(Metaverse Japan)は、XR・メタバース総合展 2026【夏】のアドバイザーとして、会期中に実施される特別講演プログラムの企画・監修を行っています。
6月19日(金)に開催された第3セッションでは、「XR × AIエージェント・フィジカルAIで進化する技術伝承と人材育成 ~現場DX時代の技能継承・教育設計・組織変革~」をテーマに、製造業やインフラ分野における技能継承や人材育成、現場DXに取り組む研究者・実務家が集結。熟練人材の減少や人材不足が深刻化する中、XRとAIを活用した新たな教育のあり方や、組織変革を含めた社会実装の方向性について、多角的な視点から議論が交わされました。
ファシリテーターは、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科准教授であり、株式会社d-strategy,inc代表取締役、Third Ecosystem,inc代表取締役を務める小宮昌人氏が担当。
登壇者として、
日立製作所 研究開発グループ 先端AIイノベーションセンタ ビジョンインテリジェンス研究部 リーダ主任研究員 秋山高行氏
川崎重工業株式会社 技術開発本部 システム技術開発センター システム基盤技術開発部 特別主席研究員 志子田繁一氏
日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフト イノベーション ハブ シニア ソリューション エンジニア 鈴木敦史氏
を迎え、XRとAIエージェント、さらにはフィジカルAIの進化が、技術伝承や人材育成、現場業務のあり方をどのように変えていくのかについて議論が展開されました。
深刻化する技能継承課題と現場DX
セッションでは、多くの産業で熟練技術者の高齢化や退職が進む一方、人材不足が深刻化し、従来のOJT中心の教育だけでは知識や技能の継承が難しくなっている現状が共有されました。

こうした課題に対し、XRやAIを活用して熟練者の知識や経験をデジタル化し、必要なタイミングで誰もが学び、実践できる環境を構築することが、現場DXを推進する上で重要なテーマであることが確認されました。
人とAIの協働によって進化する技能継承
日立製作所研究開発グループの秋山高行氏は、AIやコンピュータビジョン技術を活用した現場支援の取り組みを紹介。熟練者の動作や判断をデータとして可視化し、暗黙知を組織の知識資産として共有することで、属人的だった技能継承をより持続可能なものへと転換していく可能性について語りました。

また、川崎重工業株式会社の志子田繁一氏は、人とロボットが協働する次世代の製造現場について解説。自動化を進めるだけではなく、人間の能力を拡張しながら安全性と生産性を両立することが重要であり、XRやロボティクスを組み合わせた新たな現場づくりの方向性が示されました。

AIエージェントが変える教育と人材育成
日本マイクロソフト株式会社の鈴木敦史氏は、生成AIやAIエージェントの進化によって、教育や業務支援のあり方そのものが大きく変わり始めていることを紹介しました。

個人ごとに最適化された学習支援や、AIによるリアルタイムなナレッジ提供によって、経験年数に依存しない新たな育成モデルが実現しつつあります。
さらに、デジタル空間と実世界をつなぐフィジカルAIの進展によって、人とAI、ロボットが協調しながら業務を遂行する未来像についても議論が行われました。
技術だけでは実現できない組織変革
後半のディスカッションでは、技術を導入するだけでは真の現場変革は実現しないことも指摘されました。
教育設計や業務プロセスの見直し、組織文化の変革を含めた総合的なアプローチが不可欠であり、経営戦略と現場の実践をつなぐ視点が重要であるとの認識が共有されました。
また、人とAI、ロボットがそれぞれの強みを活かしながら共創する環境を整備することが、これからの産業競争力を左右する鍵になるとの見解も示されました。


「人の力を拡張する」ことが技術進化の本質
各登壇者に共通していたのは、XRやAI、ロボティクスを単なる効率化ツールとして捉えるのではなく、人の能力を拡張し、より創造的な仕事へとシフトしていくための基盤として位置付ける視点でした。
技能継承、人材育成、安全教育、生産性向上──。
XRとAIエージェント、フィジカルAIの融合は、現場のあり方そのものを変革し、人とロボットが協調する新しい産業社会の実現を支える基盤となりつつあります。
技術だけでなく、教育や組織、経営戦略までを含めて設計することこそが、持続可能な現場DXと次世代の人材育成につながる。その方向性が、今回のセッションを通じて改めて共有される機会となりました。

社会実装を支えるエコシステム形成へ
Japan Spatial Forum(Metaverse Japan)は、メタバースやXRから始まった空間技術を、AIやロボティクスとの融合、さらには教育や産業分野への展開を通じて発展させるため、産業界、研究機関、スタートアップ、クリエイターなど、多様なプレイヤーをつなぐ対話と共創の場づくりを進めています。
今回のセッションで示されたように、技術伝承や人材育成の未来は、XR、AI、ロボティクスを統合した新たなエコシステムの中で進化していきます。
Japan Spatial Forum(Metaverse Japan)は、今後も領域を越えた知見の共有と新たな共創機会の創出を通じて、「Spatial × AI × Robotics」が支える次世代の社会実装とエコシステム形成をサポートしていきます。
