渋谷の上空で繰り広げられる AIR RACE X
このセッションでは、宮下公園で開催される「AIR RACE X」を主軸に、都市空間のあり方とテクノロジーを掛け合わせて新しい価値がどのように作られるのかを登壇者が語りました。
星野瞳 氏:三井不動産株式会社 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部 アーバン事業部 運営企画グループ グループ長(左)/ 渡邊信彦 氏:株式会社STYLY 取締役 COO(中央)/ 長田新子 氏:一般社団法人Metaverse Japan 代表理事/一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(右)
コロナ渦以降、パブリックスペースを活用していかに来場者へエンターテイメントを提供できるか、さまざまなチャレンジをしてきたと長田氏はいいます。
「MIYASHITA PARKを活用して新しく挑戦した取り組みの一つが、昨年のMetaverse Japanのイベントをきっかけに実現した AIR RACE Xというモータースポーツです。コロナの影響で開催できなくなってしまったスポーツイベントはたくさんあります。もちろん、飛行機のレースも例外ではありません。それを復活したいという想いを持ったパイロットたちのアイディアとテクノロジーが合わさって生まれたのが、XRを活用したAIR RACE Xです」(長田氏)
長田新子 氏
もちろん、実際に渋谷の上空で飛行機を飛ばすことはできません。各地の会場でパイロットが飛行し、そのデータを渋谷上空の現実空間にARで再現することでレースを実現しています。場所を問わずにさまざまな場所で同時多発的に観戦ができるのことが最大のメリットで、レースフォーマット自体を作り変えた点が世界初の革新的な取り組みといえます。
渡邉氏は、「今回は渋谷の音楽祭もMIYASHITA PARKで行われるため、さまざまなコンテンツが同時多発的に展開しています。コロナ禍が終息し、改めてバーチャルからリアルにシフトした今だからこそ、バーチャル中心でやってきた時に培った技術が総動員できているんです。レースと音楽ライブ、アニメーションを複合させ、新しい取り組みができるようになったことにワクワクしています」
渡邊信彦 氏
MIYASHITA PARKの可能性
AIR RACE Xの舞台となるMIYASHITA PARKについて、星野氏は「今まで味わったことのない、まったく新しい体験をMIYASHITA PARKでできることにワクワクしている」と話します。
「MIYASHITA PARKは下層階に三井不動産が管理運営する商業施設があり、屋上には渋谷区立宮下公園がある複合施設です。さらに、sequence MIYASHITA PARKというホテルも入っているため、公園と商業施設、ホテルがミックスされた複合施設を三井不動産が一体となって管理しています。自治体や国が管理するものであった公園が、Park-PFIというシステムを使うことで、民間企業が公園の指定管理者となり、運営ができるようなモデルを目指しています。宮下公園もそのモデルの一つであり、リアルとデジタルが融合する最先端の場所となっています」
星野瞳 氏
渡邉氏は、「今年新たに挑戦するのがアニメーションとのコラボです。宮下公園が舞台になっている作品があるのですが、ライブシーンをそのまま再現をしようと思っています。AIR RACE Xとアニメのライブシーン、渋谷の夜空がAR空間を介してコラボレーションする。宮下公園は渋谷の中でも開けた空間なので、すごく迫力が出るのではないかと大変楽しみにしてます」
現実空間にコンテンツを重ねるXRのテクノロジーを使うことで、テレビのチャンネルを切り替えるように音楽祭やスポーツイベントが楽しめるようになります。そして、それをスマホで誰でも気軽に見ることのできる点が最大の魅力となっています。
また、渡邉氏は「今回の取り組みが新しいビジネスに繋がったり、ユースケースが増えたりする事例が、今年から来年にかけて増えていくのではないか」と話します。
「スマートフォンやスマートグラスを活用して、自由自在に空間を使った演出ができるようになっています。広告やライブの演出など、今までに体験したことのない体験が宮下公園で味わえるのです。その結果、MIYASHITA PARKの価値がまた一段と上がるかもしれないですね」
都市空間とテクノロジーで生まれる新しい価値
セッションの最後には、空間とテクノロジーを掛け合わせて生み出される価値について登壇者が語りました。
渡邉氏は、「空間プラットフォームの中で複数の体験を同じ場所で味わえる。場所の価値が上がり、新しい価値が創造されるのではないか」と話します。
「コロナ禍の混乱が落ち着き、改めてリアルな体験の価値が上がっています。自治体が用意した空間を使い、コンテンツを提供する側は今までにない空間の使い方を提示する。そのような未来が近づいてきているため、リアルとバーチャルを掛け合わせた新しい価値を想像していかなければと考えます」(渡邉氏)
長田氏は、「街全体に空間を活用したプラットフォームを導入したいとメタバースジャパンでも常々話していた」と語り、MIYASHITA PARKで開催されるイベントへの参加を呼びかけました。
「MIYASHITA PARKの中でいくつものコンテンツが同時に楽しめる機会が実現しますので、新しい空間の活かし方を想像しながら、イベントに参加していただけるとうれしいです。新しいアイディアがメタバースジャパンから生まれて、マルチステークホルダーやコンテンツオーナー、デベロッパー、自治体とうまくコラボすることで、いろんな発展ができたらいいなと思います」