Metaverse Japanには、「実空間メタバース」「Web3メタバース」「メタバースライフ」そして、本イベントにあわせて発表された「政策提言」の4つのワーキンググループがあります。
このセッションでは、各ワーキンググループで議論されていることや、政策提言の内容が紹介されました。
実空間メタバース:バーチャルと実空間の相互連携を検討
「実空間メタバース」は、バーチャル空間と実空間の相互連携について検討を行うワーキンググループです。座長の豊田氏は、実空間メタバースの位置づけを「フィジカル」と「バーチャル」、「エージェント」と「環境」の四象限で説明します。
「20世紀まではフィジカル側だけで世の中が成り立っていたため、デジタルかつエージェントにあたる部分はまだ理解されにくい状況にあります。ここに、デジタルかつ環境にあたるデジタルツイン環境を作り、フィジカル環境を整合させることを進めています」
「デジタルかアナログか」「バーチャルかリアルか」は、どうしても二項対立で考えがちですが、これらは連続的なもの。その間のグラデーションの部分についてしっかり考えていく必要があると豊田氏は強調します。
Web3メタバース:規格の統一や海外との調整を進める
「Web3メタバース」のワーキンググループでは、海外の事例研究や、海外のようなプロジェクトを日本でも作ることができるのかについて検討。
重要な軸として絢斗氏は、「旧BlockChain Contents Association(現JBA)が作成した規格『Oct-Pass』をメタバース仕様にアップデートし、日本企業同士で共通となる規格のを策定していくこと」、そして「OpenSEAなどの海外プラットフォームや、Metaverse Standard Forumなどの海外団体との調整・折衝を行うこと」の2つを挙げます。
「NFTを準備している、すでに作っているという企業は少なくありませんが、せっかくNFTを発行しても、他のプラットフォームとの互換性がないと閉じたものになってしまいます。そういったことがないように整備していきたいと考えています」
メタバースライフ:メタバースでの生活で生じる問題を議論
さわえ氏が座長を務める「メタバースライフ」ワーキンググループでは、メタバース空間内の生活に関する議論を実施。第1回では、「メタバースプラットフォームのトラブル改善」をテーマに実施。
「現実空間の法律がメタバース空間でもそのまま適用できるかという問題をはじめ、他のユーザーに危害を加える行動をとるユーザーへの対応、アバターの人格に関する問題や、音の権利などさまざまな課題があります。プラットフォーマーとしてどんな対応をすれば、ユーザーに快適に遊んでもらえるかといった部分を議論しています」(さわえ氏)
さらに第2回では、ユーザー目線に立ってみることを目的に、実際にアバターを作り、メタバース空間に遊びに行くデモも行いました。
世界を主導するための「5つの柱」を提言
このイベントにあわせてMetaverse Japanが発表した「世界を主導する日本のメタバース産業政策」は、「知が循環し、世界を主導するメタバース産業立国 ~制約を超えて誰もが可能性を解き放ち、日本の産業・人が世界ではばたくメタバースを!~」をコンセプトに、5つの柱を提案。それぞれの柱について、各登壇者がその要点や思いを語りました。
- 産業基盤強化
「領域横断的な技術基盤を作るために、共同で技術開発を進めていくことが重要。また、実装のユースケースを作っていくことも重要になるが、メタバースにはものづくりの要素があるので、日本人には意外と向いているのではないか」(小塩氏)
- メタバース特区創出
「これはメタバース空間内に特区を作り、そこで税制などを議論する取り組み。メタバース内では行動や取引などすべてのデータが取れるので、さまざまな試みを実施して、それを世界に発信していきたい」(小塩氏)
- 人材育成
「ゲーム領域の3Dとメタバースの3Dにはノウハウに違いがあり、今後は『3Dを作っていたけれどメタバースはわからない』『メタバースのことはわかるけれどWeb3のことは知らない』という人材が新たな領域で仕事をするケースも増えていく。そのため、高専や大学との連携だけでなく、社会人の学び直しも重要になる」(絢斗氏)
- ルール形成と国際標準
「標準化のルールを作るのは、イギリスアメリカが得意とするところだが、日本がリードしながら国際標準を作っていきたい。日本に向いたものを提供していくには、各国の状況もしっかり見ていかないといけない。幸い、政府が後押しをしてくれているので、しっかり提言をしていきたい」(河合氏)
- ダイバーシティ&インクルージョン
「Metaverse Japanには、教育や地方自治体の関係者からの問い合わせを多く、ダイバーシティ、インクルーシブを意識したメタバースの必要性を実感している。ガイドラインの整備や制約のある方たちの就労支援などに取り組んで行きたい」(馬淵氏)
縦割りではない議論が大切
提言を聞いた伊藤氏は、『人間の行動をマネージメントする手段』として、技術、効率、文化、経済の4つがあるとしたうえで、「メタバースでも、そのどの手段がベストなのかを考え、ユーザーにとっても、システムにとっても優しく正しい方法を探っていく必要がある」と助言。
「従来の縦割り型ではなく、技術者や法律家をはじめとしたいろいろな人たちがインクルーシブに議論して、改善していくことが大切です」とセッションをしめた。