新しい価値を作り出すチャンス

このセッションでは、クリエイターエコノミーについてや、メタバース時代のクリエイターに求められるものを4名のゲストに語っていただきました。

山口 征浩 氏:株式会社Psychic VR Lab 代表取締役CEO(左)
上野 直彦 氏:経産省・Web3.0時代クリエイターエコノミー研究会委員/AGI Creative Labo/株式会社 CEO/日本ブロックチェーン協会事務局長(中央左)
中川 悠介 氏:アソビシステム株式会社 代表取締役社長(中央)
黒田 貴泰 氏:株式会社stu CEO(中央右)
長田 新子 氏:一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(右)

「現実とバーチャルが重なりあう時代がやってくる、そんな未来を私たちは見ています」と山口氏は言います。

「『NFT.NYC』というイベントがあった際に、日本のアート作品やNFTアートでタイムズスクエアをジャックしたんです。実際にタイムズスクエアに行かなくても遠隔で展示物を見られれたり、展示されているジオラマを持ち帰れたりできる企画を行いました」

通常、タイムズスクエアをジャックするとなると金銭的にも法的にも困難ですが、メタバースのテクノロジーを活用してリアルな場所に仮想空間を作り上げれば、アート作品を展示することが可能です。

「現実とバーチャルの融合が実現するようなテクノロジーをライブ会場やスポーツ観戦で活用できれば、普段メタバースに触れていない層にも届けられます。そういったスキルが求められているんです」(山口氏)

山口 征浩 氏

また、メタバース空間に参加する敷居を下げたいと山口氏は言います。

「今のメタバース空間って、まだまだ現実世界の概念に影響を受けている部分が多いと思います。その固定観念を取り除くために、『STYLY』というサービスを通して新しい表現方法を模索している段階です」

現段階では、現実世界を拡張していく「型」のようなものは存在しません。だからこそ、クリエイター一人ひとりが新しい世界を再構築し、新たなムーブメントを起こせる面白い時代だと言えます。

「クリエイターは新しい価値を作り出し、新たな体験を生み出すスキルが求められています。誰もがその新しい世界を、空間を身にまとえるような文化を作っていきたいです」(山口氏)

自身の世界観を持ち失敗と挑戦を繰り返す

上野氏は、「漫画を作りたい、漫画の原作者になりたい人たちのクリエイターエコノミーを実現するためには、コミュニティの形成は必要不可欠」と言います。

「クリエイターのほとんどが、たくさんの挑戦をし多くの失敗を経験すると思います。それでもめげずにトライ&エラーを繰り返し、突き詰めていくといずれは立派なアウトプットができるようになるはずです」と話す上野氏。そういった活動を続けていくことで、熱量のあるコミュニティと出会うことができると言います。

「日本初のNFTが世界と繋がって、マーケットプレイスで1位を取ったんですよ。それが話題となり、今度はアニメを作る話まで出ています。1人のクリエイターの創作が、ここまで大きく展開するなんて、今までは考えられませんでした」

上野 直彦 氏

高額な機材など必要なく、手元にあるツールで十分に挑戦することはできます。大切なことは「自身の世界観を持つこと」と上野氏は強調します。

「自分の世界観を持って、思い切り一番やりたいことをやってみて欲しいです。挑戦していく中で、一つでも当たってコミュニティが形成されていけば、きっと面白い世界が待っています」

各世代のクリエイターがよりフラットにつながる

「今の若い世代は価値観が多様で、それぞれの領域で深く活躍できる人がどんどん出てきています」と黒田氏は言います。

黒田氏は、メタバースを技術やトレンドのように捉えてしまい、その中に住もうという気持ちにはなれないと語ります。しかし、中にはメタバースを自身のライフスタイルの一部として捉えている世代もいて、自身との感覚の違いを痛感することがあるようです。

黒田 貴泰 氏

さらに黒田氏は「新しい感覚を持った人たちに寄り添っていくことが、今後の10年、20年の進化につながっていくだろうとみています」と語ります。

2つの世代がどのように交わっていくのか、それぞれが歩み寄っていく必要性があり、方法に関しては模索していきたいと黒田氏は言います。

「40代はリアル寄りの体験や技術をどのように若い世代へ伝えていくか考え、20代は自身の感性を研ぎ澄まし、自分たちの思うままに発信していってほしいです」

よりグローバルな視点を持つ

タレントやアーティストをプロデュースする中川氏は、今まで以上にグローバルな視点を持つようクリエイターへ訴えかけます。

「今年の4月に、『COACHELLA』という世界的なフェスへきゃりーぱみゅぱみゅが参加しました。また、ほかのタレントやアーティストも世界初のメタバースファッションウィークへの参加や『STREET』という世界的なファッション紙とコラボしています。NFTなども併せて販売しており、どれも“かわいい”と評価されました」

中川 悠介 氏

COACHELLAでは外国の方から多くの問い合わせをもらい、メタバースやNFTの可能性を感じたと中川氏は言います。また、日本は良いものよりも流行りのものが好まれる文化があり、海外市場とのギャップが大きい点が特徴です。

だからこそ、メタバースの市場はクリエイターやアーティストが世界に進出するきっかけとなり、日本が世界に挑戦するラストチャンスだと中川氏は言います。

「日本は業界が整いすぎていて、世界に打って出ていかなくてもある程度の市場規模があります。ただしWeb3は、今まで評価されていなかった人でも力のあるクリエイターなら世界に挑戦できる絶好のチャンスです。メタバース 時代のクリエイターたちはよりグローバルに出ていく存在になって欲しいですね」

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