NFTとメタバースの相性
モバイル黎明期よりコンテンツ作りに携わった経歴を持ち、IP(知的財産)ビジネスの第一人者である水野氏。NFTで生まれたコンテンツやIPが成長していくには一連のプロセスがあると水野氏は語ります。
「NFT発のIPは、強いストーリーや世界観を持ちません。そのため、マンガ・アニメ・Webtoonなどでストーリーを補完し、メタバースで世界観を表現し、グッズ販売でIPとしての価値を高めるというプロセスを辿ります。
日本でウェブ以前のコンテンツとしてはマンガ・アニメ・グッズが強く、これらを活用することでビジネスとして進化していく流れがあるのです。メタバースはNFTがIPとして育っていくための重要なファクターであり、NFTプロジェクトロードマップの必須要素だと考えています」
さらに世界の先行NFT事例として、BAYCやAZUKIといったコンテンツを挙げ、NFTとメタバースが組み合わさることでコンテンツやIPが成長していくと述べています。
グローバル展開に向いているWeb3/メタバースを活用したJAPANコンテンツ
Web3やメタバースを活用したJAPANコンテンツの中でグローバル展開に向いているものは3タイプに分けられると水野氏は言います。
「1つ目はWeb3で生まれた新しいIPです。例えば2018年5月に当社が打ち出し、100種類の宝石のキャラクターをベースにしたPFPプロジェクトとして評価された『Crypto Crystal』というコンテンツがあります。
テクノロジーに注力しすぎるとデザインが後回しになってしまうことが多いなか、クラシックNFTの中で最もキャラクターデザインがしっかりしていると評価され、値が上がりました。
日本のイラスト力やキャラクターデザイン力をコンテンツに落とし込めばオリジナルプロジェクトでも世界で展開できる可能性は十分にあります」
「Crypto Crystal」プロジェクトはDAOからの希望でThe Sandbox向けのメタバースLANDを2021年から開発中であり、メタバースを活用してファンを増やしていく取り組みをしているということです。
また、他の事例としてWeb3発のIPである「Zombie Zoo」も紹介しました。これは9歳の少年Zombie Zoo Keeperが描いたゾンビをモチーフとした動物のピクセルNFTアートであり、世界的なコレクターに見初められ話題を集めたと水野氏は語ります。
さらに、2つ目のタイプとして、世界的な漫画やアニメのIPを挙げます。
「例えばキャプテン翼の漫画の中の世界をメタバース上に再構築するプロジェクト『キャプテン翼LAND』を当社がプロデュースしています。ファンの方はもちろん、新規層も楽しめるIPにしたいと考えています。『キャプテン翼LAND』は今年の秋以降にLANDの一部を公開予定です。」
そして、3つ目のタイプとしては街・建物・乗り物・ファッションなどのカルチャーを挙げました。
「コインチェック社が開発中の『OASIS TOKYO』や『OASIS KYOTO』が代表的です。
東京・京都と言った街そのものをサイバー空間上で表現しています。日本の街自体に興味を持つ海外の方も多く、今後世界的に広まっていくコンテンツだと想定されます。コインチェック社は自社の暗号資産取引所でSANDや、The Sandbox上の土地の販売も行っていますね」
また、水野氏はアソビシステム株式会社・ParadeAll株式会社・FractionVentures株式会社が運営している「Meta Tokyo」やThe Sandbox上に展開されているSHIBUYA109なども事例として紹介し、建造物やモニュメントは海外の顧客からも興味を持たれているため、ニーズは大きく広がっていくと予想しています。
今後メタバース進出が期待されるJapanコンテンツ
水野氏は今後メタバース進出が予想されるコンテンツの種類についても説明しています。
「まずはアニメスタジオなどの手がけるWeb3発PFPプロジェクトです。今までは個人のクリエイターなどが進出するパターンが多かったですが、今後は世界的評価の高い会社やスタジオなどが参入し始めると予想します。先述の様な世界認知のある漫画・アニメ・ゲームや街・都市・モニュメントも顧客からの需要も高いため、増えていくことでしょう。
他には車・バイク・メカやストリートカルチャー・ストリートブランドが挙げられます。世界には数十年前から日本のファッションやマシンへの関心を持っている方も多いため、これらのコンテンツの参入はますます加速していくと考えています」