■Web3メタバースへの第一歩

「Web3メタバースがどのようなものかを実際に体験したことがない人に説明するのは難しい。まずはWeb3メタバースに触れてからが第一歩」(Siu氏)

このセッションでは、Web3における日本の可能性や世界に与える影響、Web3やメタバースの未来についてSiu氏に語っていただきました。

Siu氏はWeb3メタバースへの第一歩として次のように説明します。

「メタバースを楽しむ仕組みとしてARやVRがありますが、ARやVRはメタバースを言い表すものではありません。Web3メタバースへの第一歩は、ウォレットを持ちNFTを購入することです。NFTを購入してコミュニティに参加し、メンバーがどのように関わっているかを学ぶことがWeb3を体験するスタートラインです」

Yat Siu 氏(スクリーン)
Animoca Brands 代表取締役社長 兼 共同創業者/Outblaze CEO 兼 共同創業者

またメタバースにおける現実世界との違いは、実際にその場へ行かなくてもバーチャルで学ぶことができる点だとSiu氏は言います。

「東京や中国でビジネスをしたいと思った時に、国外から見てアイディアを出していても意味がない。本当にその地でビジネスをしたいのであれば、現地に訪問して実際に投資する必要があります。Web3メタバースの世界でも全く同じことが言えますが、バーチャルで学べる点が特徴的でしょう

具体的な例でいうとSandboxを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。Sandboxのイベントに参加する方法は、メタバースを理解する1つの手段といえるでしょう」

またSiu氏はメタバースへの参加について次のように語ります。

「メタバースを理解するためには少しお金を払った程度では不十分かもしれません。とはいえ、ウォレットを開けばメタバースに関わることができます。まずは体験してみることが一番大切です」

■日本のクリエイティブと起業家の力

Siu氏は日本にオフィスを開設した理由を聞かれ次のように答えます。

「日本は文化の発信地として非常に強力です。文化の宝庫であり、NFTと非常に相性がいい。アニメや漫画、日本食などはすでに世界で認知されています。成熟した文化がある場所は、テクノロジーの恩恵を受けやすいのです」

またSiu氏は、日本におけるWeb3メタバースの可能性を語ってくれました。

「世界でも有数のコンテンツプロデューサーである日本は、将来的に多くの企業がWeb3メタバースに参入してくるでしょう。ただ作品の未来を決めるのは人間の革新と発明、そしてアイデア次第。ブロックチェーンによって情報がよりオープンになれば、新しいビジネスが生まれ経済的繁栄がもたらされます。そのため、日本にとってメタバースは非常に重要なトピックスになるでしょう」

■Web3は世界をどう変えるか?

「Web3のデジタル所有権の概念は、Web1とWeb2を組み合わせたものより大きな変化を世界にもたらすだろう」と、Siu氏は現在のWeb2が抱える問題点をもとに語ります。

「Web2では数十億人規模のデータを組み合わせることで強力なネットワーク効果を生み出すことに成功しました。そのためデータの所有権を独占している大企業は大きな利益を得ています。FacebookやGoogleは私たちの生活についてより詳しく知っており、何を望んでいるか、何を欲しているのかを把握できます。その情報は人の意思決定に影響を与えるほどの大きな力を持っているのです」

Web上で自身が発信している情報でさえ所有権はなく、すべてがプラットフォームに握られているのが現状です。そのため、いつでもデータを削除される可能性があり、基本的にプラットフォームの取り決めに依存する必要があります。これは、一種のデータ封建主義の中に存在している世代であると言えるでしょう」

しかし、これらの問題をWeb3は解決できるとSiu氏はいいます。

「Web3メタバース上ではデータの制限はできずオープンでなければなりません。そのため、データの所有権を一般ユーザーも得られるようになり、所有権を取り戻すことができます。強大なプラットフォーマーがデータを牛耳るのではなく、自分たちで価値を生み出せるようになるでしょう」

■Web3メタバースの未来

「Web3の恩恵を受けられるのは何も私たち大人だけではありません」と、Siu氏はWeb3メタバースの未来を語ります。

「子どもたちは若いうちに金融システムについて学ぶことができ、より意識を高めることができます。世界の大半の人々はリスクをどのように配分するか、どのように投資すれば良いか理解していません。そのために、価値(=情報)を奪われています。Web3とブロックチェーンは金融の観点でも世界を大きく変え、子どもたちにも恩恵をもたらすでしょう」

Web3のテクノロジーによって、ネットワーク効果や所有権経済が遊びなどを通して価値を持つようになり、そのほかにもローンや担保のように信用取引にも使われている事例もみられます。

このような変化をSiu氏は「インターネット上の自然な進化といえる」と言い、結びの言葉として次のように語りました。

「今後Web3メタバースは非常に速いペースで社会に導入されていくでしょう。10年後には皆がWeb3に参加していてもおかしくありません。そうなるまでに10年もかからないと私は期待しています」

TOP