子供たちの創造性を引き出すメタバース教育
群馬県庁主任である南齋氏は、メタバースと教育に対する群馬県の取り組みを事例を交えて説明してくれました。
「群馬県では、2022年3月に若年層向けの人材育成拠点となる施設を開設しました。デジタルクリエイティブ活動(3DCGやVRなど)に特化した施設です。小中学生の段階で参加できる自治体の取り組みとしては全国初になります。子供たちの興味があるアニメやゲーム、人材を題材として、いつの間にか技術と創造性が身につくような運営方針をとっています」
デジタル技術の進歩によって生まれる新しい技術を学んでもらい、想像豊かなデジタル人材の育成を目標にしている当施設。具体的な取り組みを南齋氏は次のように語ります。
「メタバースプロジェクトとして、県内に住む小中高生のデジタル作品展示をメタバース空間で行えるように環境を整えています。将来的には、作品を展示した子が大人になり、10年後などに見にきた子供たちと交流しあえるような場所にしていきたいと考えています。それ以外にも、群馬県の名産品をモチーフにしたゲームワールドも作成しています。施設を利用してくれている小中高生の技術向上に伴って、子供たち自身でゲームワールドを作ってもらえるように取り組んでいきたいです」
不登校生でも通いやすいメタバース空間での支援
「メタバースを社会福祉に使ってみよう」と、不登校支援にメタバースのカルチャーをかけ合わせたのが一般社団法人ゆずタウン代表の水瀬氏です。
「不登校生の居場所を作るため、メタバースでしかできない活用法を模索していました。メタバースを累計3,000時間活用している自身の経験を入れ、ボトムアップで作り上げてきた取り組みです。」
広島市在住の不登校生たちへVRゴーグルを送り、限定5名の実証実験としてメタバース空間での2週間のプログラムを行ったとのこと。
「景色のいいワールドへみんなで行ったり、メタバースで活動しているクリエイターに話を聞いたりと、一緒に体験を共有する点が効果的だったと思います。プログラムの終了時には、メタバース空間で修了式を行い、修了証を渡しました。それだけでなく、現実の家にも修了証が届くようにしたんです」
2023年の夏頃には2か月間に期間を延長して全国展開を予定しているこのプロジェクト。最後に、今後の展望として楽しみな話をしてくれました。
「最初の2週間は同じような取り組みをし、その後のプログラムは企業と協力してプログラムを作っていく予定です。メタバースの多様な活用法を模索しながら、不登校生と体験を共有して楽しめるコンテンツを用意していきたいと思っています」(水瀬氏)
教育機関だからこそできるメタバースの活用方法
酒井氏が所属する立命館の起業・事業化推進室は「学生や先生方の企業を応援しよう」と教育機関としてスタートアップ支援をワンストップ型で行う部署です。
「教育機関とメタバースは非常に親和性が高いと考えています。例として、学習コンテンツ教材を高校生向けに開発して提供する取り組みやメタバース空間を活用して授業をするなどが挙げられます」(酒井氏)
立命館大学ではメタバースの研究も行われており、酒井氏は次のように取り組みを説明してくれました。
「メタバースの研究として、不登校支援を心理学的な側面から研究している先生方もいます。サトウタツヤ教授は、メタバースでのコミュニティ学習について熱心に研究されています。それだけでなく、高校生が自分たちの学校をメタバース上に作ってしまう事例もあります。相互が協力できるよう、学生が立ち上げた企業と先生方の研究が連携したような形で進んでいく取り組みもサポートしていきたいと考えています」