新会社「NTTコノキュー」での自治体連携の取り組み


このセッションでは通信キャリア大手3社がメタバースに関する取り組みを紹介しました。まず赤沼氏が、NTTグループの取り組みについて話します。

長田 新子 氏:一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長(左)
赤沼 純 氏:株式会社NTTコノキュー マーケティング部門 担当課長(中央左)
中馬 和彦 氏:KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 バーチャルシティコンソーシアム代表幹事(中央)
加藤 欽一 氏:ソフトバンク株式会社 サービス企画本部 コンテンツ推進統括部 メタバース・NFT部 部長(中央右)
馬渕 邦美 氏:PwCコンサルティング合同会社 パートナー 執行役員 元 Facebook Japan株式会社 執行役員(右)


「2022年10月1日、NTTグループ全体のXR領域に関わる新会社として『NTTコノキュー』が事業開始しました。まずはエンタメ領域のイベントからスタートし、これまでAKB48・NARUTO・ゴジラなどとタイアップしながらブラウザ型のメタバースコンテンツを展開しています」

さらに今後は地方創生にも目を向け、自治体アンテナショップが集まるメタバースの展開を計画しているとのこと。

「旅行代理店および広島県観光連盟と連携し、音楽イベントや広島のグルメや観光体験商品を紹介するブース展示などを行って考えています」(赤沼氏)

赤沼 純 氏

 

KDDIは「デジタルツイン渋谷」の取り組みをスタート


続いて中馬氏がKDDIの取り組みを説明しました。

KDDIでは最新テクノロジーを活用して渋谷の街を拡張する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を発足し、音楽やアートなどのコンテンツを展開。当初はおもにAR領域での取り組みを行っていたものの、新型コロナウイルスの流行でイベントなどの実施が難しくなってしまいました。

そこで、VRコンテンツとして、2020年に『バーチャル渋谷』をリリースします。これは、国内初の自治体公認メタバースであり、渋谷区とKDDI、clusterやSTYLYといったXRのスタートアップが連携して実現しました。そして街に賑わいが戻ってきている今、再びデジタル空間とリアルの空間を接続する試みとして進めているのが『デジタルツイン渋谷』のプロジェクトです。その取り組みについて、中馬氏はこう話します。

「たとえば、メタバース上のお客さんがショップに入ると、現実のショップにお客さんのアバターが出現し、リアルの店員さんから接客を受けられるといったユースケースを想定しています。今後はメタバースとデジタルツインを状況や用途に応じて使い分けながら都市機能の拡張を図っていきたいですね」

中馬 和彦 氏

 

ソフトバンクは「バーチャルPayPayドーム」などを展開


ソフトバンクグループは「THE SANDBOX」「ZEPETO」「polygon」などメタバース・NFT領域の企業への投資を行ってきました。さらに、2019年からはソフトバンクホークスの試合でのVRマルチアングル観戦や、バーチャルフジロック会場、バスケ日本代表VR・AR映像体験なども手がけるなど、早い時期からこの領域に注力しています。加藤氏は、2022年の取り組みとして2つの事例を紹介しました。

「PayPayドームをメタバース化するプロジェクトは、現地に観戦に来られる方も来られない方も楽しめるように、『バーチャルメタバース』『リアルワールドメタバース』という2つのコンテンツを用意しています。プロ野球選手の投球をほぼリアルタイムで体験できるメタバースならではの機能も実装しました。

また、スマホベースのアバター交流メタバース『ZEPETO』内にオープンしたソフトバンクショップでは、実際のショップクルーがアバターで接客を行っています」

加藤 欽一 氏

 

BtoB事業や新領域の展開は?


さらに話題は、各社のB to Bの取り組みにも広がっていきます。NTTコノキューでは、先述の広島県の事例をはじめとした自治体や地域企業との連携を進めているといいます。場所としての提供を行うことに加え、「そのなかでどんなユーザー体験を提供できるかを模索していくべき」と赤沼氏は話します。

「コロナ禍でのバーチャル渋谷の取り組みが注目されたKDDIには、ほぼ全都道府県の自治体から相談が寄せられたと中馬氏は話します。

「関心の高さを感じる一方で、メタバースをどう活用するかは模索中の自治体が多い印象です。最終的には集客がキーポイントとなってくるでしょうね」(中馬氏)

ソフトバンクにも、多くの自治体から問い合わせがあると話す加藤氏。「メタバースの魅力はWebサイトよりも多くの情報を届けられることだと思うので、地方の魅力を伝えることに貢献していきたい」と意欲をみせます」(加藤氏)

馬渕 邦美 氏


セッションの最後には、馬淵氏からの問いかけで、新しい領域でのメタバースの活用について、それぞれが次のように話しました。

「インターネットは身体性を伴うものに弱いという弱点がありました。メタバースはアナログなものも取り込むことができるため、大きなビジネスチャンスがあると思います。従来と異なる、焼き直しではないコンテンツを1から作っていくことが大切だと思っています」(中馬氏)

「今はメタバースによる大きなパラダイムシフトが起きている段階です。そのなかで本当にエンドユーザーに求められるものを深掘りしていく必要があると考えています」(赤沼氏)

「メタバースはあくまでも手法の一つなので、どういった使い方をしていくかを考えることが重要です。効率化が追求される昨今、コミュニケーションの不足も問題視されています。メタバースでそこの溝を埋める使い方ができないか追求したいですね」(加藤氏)

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