官民連携会議設置の狙いは?


メタバースの発展に伴う仮想空間上のコンテンツの創作、利用などをめぐる新たな動向を踏まえ、官民の有識者でつくる「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」が2022年11月、内閣府知的財産戦略推進事務局内に設置されました。塩原氏は、同会議が設置された理由について次のように語ります。

道下 剣志郎 氏:弁護士(左)
塩原 誠志 氏:内閣府知的財産戦略推進事務局参事官(コンテンツ振興担当)(右)


「新しい政策課題として、今はやはりメタバース上でのコンテンツをめぐる法的課題など、さまざまな課題把握や論点整理があります。それらの検討を行うため、官民連携会議を立ち上げました」

塩原氏によれば、内閣府としてもメタバースの発展がコンテンツの分野に大きなインパクトをもたらすといいます。具体例には、メタバース上のアバターへのファッションがあるといい、塩原氏は「現実空間での財消費がメタバースの方にも転移し、新しい形でのコンテンツ消費が生まれてきている」と強調します。

一方で、メタバースをめぐるコンテンツビジネスの好機をものにするうえで、法的課題への対応が重要になってくるとのことです。具体的には、メタバース空間内で、仮想オブジェクトのデザインに関する知的財産権や肖像権、パブリシティ権をめぐる法的な問題が起きてくるといいます。

塩原 誠志 氏


「さまざまなユーザー間のトラブルやハラスメントなどの問題に対応するためのルール形成や、課題に対する考え方の整理が重要だと考えています。一方、メタバースの技術が発展途上で流動的な部分が多いことを踏まえれば、法的課題への対応についても当面は柔軟かつソフトロー対応が重要だと捉えています」

 

メタバース空間で起こる問題とは?


すでにメタバースビジネスが活発化するなか、実務レベルでは、具体的にどのような法的課題が挙げられているのでしょうか。道下氏は、第一にわいせつ表現が起こり得ると指摘します。

「メタバースの中にもプラットフォーマーが想定していない形で、公に羞恥心を感じさせるアバターが入ってくることが考えられます。実社会の公然わいせつといった形で、ポルノグラフィティを配布する行為も、想定できるでしょう」

道下 剣志郎 氏


道下氏によれば、メタバース内でわいせつ行為が行われた場合は、現行法にのっとり、刑法や児童ポルノ禁止法などで捕捉できるとのことです。一方、現行法では不十分な部分があることから、利用規約による禁止やアカウント停止といったソフトローによる対応、技術面でのサポートが重要になるといいます。

「私たちがソフトローやハードローを作るとは言っても、メタバースのような新技術をどうやって安心して使えるかという問題では、結局、技術面のサポートが無視できません。例えば、わいせつ行為をする人への対応であれば、ミュート機能の実装のほか、アカウントのブロックや停止ができるのではないかと考えています。問題事案の発生を防ぐためにも、メタバースプラットフォームにおける利用規約は極めて重要となるでしょう」

道下氏によれば、わいせつ表現のほかにも、誹謗中傷・侮辱や差別表現、脅迫、騒音などが問題事案になりやすいとのことです。

 

「三方よし」の対策を


塩原氏は、こうした問題事案に派生した法的課題に対し、次のように対処していくと語りました。

「官民連携会議を検討の場とし、課題の把握や論点整理を通じて、官民一体となったルール整備を整備していくことで、メタバース事業者にとってはさまざまな法的リスクの低減、ユーザーにとってはメタバースを安心して利用できる環境の整備、コンテンツホルダーにとっては権利の適切な保護をそれぞれ図っていきたいと思います」

 

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