地方で急激に進む人口減少の波を食い止めるには


大分県が発表している人口推移によると、2014年には117万人いた人口は、2022年の最新データによると110万人に減少しています。

地方で人口が減少すると悪循環が生じます。まず、さまざまな事業の収益が減少し働く人の収入も減少します。消費が冷え込み企業の倒産や移転が加速、商品価格が高騰します。大分県は人口減少の進みが早いためスーパーの倒産が増えており、買い物をするのも困難な人達が増えていると安部氏は語ります。

安部 永一郎 氏:株式会社OX 代表取締役社長
角田 拓志 氏:株式会社オープンハウスグループ メタバースエバンジェリスト


人口減少による地方の悪循環を止めるには、雇用やサービスの充実と産業の創出が必要です。安部氏は「大分と言う地方の土地で何が充実につながるのかを考えたところ、メタバースをはじめとするWeb3の事業が、これから伸びていく産業」だと考えました。

 

子どもが先端技術を学ぶ機会をつくりたい


大分県には従来より科学館が存在しませんでした。先端技術を学ぶ以前に知らないレベルかもしれません。大分県もそのような状況を鑑みて、科学体験ができるような化学室をビルの1階を借りてつくりました。

「大分県からノーベル賞科学者を目指して、さまざまな講座を紹介しているのですが、実際行っている講座は、『煮干しの解剖』のような先端テクノロジーからは離れたものとなっているのが現状です」(安部氏)

安部 永一郎 氏


同じ自治体でも群馬県では小学生からプログラミングやゲーム制作や3D制作を自治体として施設を作り教える教室を無料で行っています。安部氏は「大分でも先端技術を学ぶところを見つけて知る段階から広げていかないといけない」と語ります。

 

大分をデジタルの力で変えるべく、会社を設立


そのような状況を打破することをめざし、安部氏は22年5月に「株式会社OX」を設立。経済的・心理的な障壁がない社会環境を作り、大分をデジタルの力で、大分から世界を変えていけるような人材をどんどん増やしていこうと言う企業理念で経営しています。

中小企業庁の「頑張ろう商店街事業」の委託事業として行った商店街のメタバースイベントは、メタバースやVRを知らない商店街の店主などに理解をうながすところからスタート。

大分市内にある「五番街商店街」をメタバースで再現。郷土料理を画像で共有して訪れた人に説明するなどの交流も生まれ、連日20〜30人程度が出入りする状況が続きました。地元スポーツチームをはじめとした取り組みに共感する企業によるブース出展もあり、盛り上がりをみせました。

さらに、VRゴーグルを使ってメタバースを体験できるリアルイベントも実施。大分県の竹田市の市長も会場を訪れてVR体験をするなど、大いに盛り上がったといいます。

 

メタバースやWeb3に取り組む部活を創設


子供たちの大分と東京の文化の格差を埋めることにも注力。大分市内の私立の学校中高一貫校とタッグを組み、メタバースやWeb3の先端技術を学べる部活の創設を進めています。

「子供たちや子供たちに限らず、クリエイティブ側の人間を増やしていくことで地方をより豊かに活性化をしていきたいと考えています」

部活創設の取り組みに対し、自身も大分出身だという角田氏は、「将来、全国の高校に『メタバース部』ができたときに、大分県が強豪県になる未来まで見える取り組みだと思う」と感想を述べました。

角田 拓志 氏


さらに、この取り組みについての、大分県職員の別所宏朗氏からのビデオメッセージによるコメントも紹介されました。

「メタバースなどの先端技術に触れる機会を子供たちに提供し知ってもらうのが第一です。他の高校からも引き合いもあると聞いているので、県内でさらに拡充していき、今後の成長をめざすにあたっては支援したいと思っています」

別所 宏朗 氏:大分県商工観光労働部 経営創造・金融課


最後に、「今後取り組みたい事業は?」という角田氏からの問いかけに対して安部氏は「部活をいろいろな学校をつくり、大阪万博に子供たちの発表の場を持っていきたい」と展望を語りました。

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